橋本 真希

自己評価と「インポスター症候群」

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多くの社会人が強い関心をもつ「評価」。
会社や上長、周囲の社員から高い評価を得られたら、素直に嬉しいと思うのが一般的です。

一方で、高い評価を受けることをネガティブに捉える人も実は少なからず存在します。
自分自身を過小評価することから生じるこのような心理状態は「インポスター症候群」と呼ばれています。
周囲から高く評価されたいと望む人には、なかなか想像できないのではないでしょうか。
 
今回は、そんなインポスター症候群の特徴に当てはまる人が評価とどう向き合えばよいのか、簡単に考えてみたいと思います。

インポスター症候群の特徴①:自己評価の歪み

インポスター症候群の人は、自己評価に歪みが生じる傾向があります。

自分の実力や才能を過小評価し、たとえ自分が明らかな成功を収めている場合でも、自分の成功や成果を自分の力によるものとは認識せず、単なる偶然や他人の援助によるものだと信じる傾向にあります。

インポスター症候群の特徴②:恐怖と不安

自分の成功・成果は自分の実力に関係なく得られたものだと考えているため、いつか他人に自分の能力不足がバレてしまうのではないかという不安を抱え、その状況を回避しようとすることが多々あります。
時には周囲を欺いているような感覚に陥ることも・・・

この恐怖や不安から、新たなチャレンジを避けてしまったり、ポジティブな変化でも受け入れられなくなってしまうことがあります。

インポスター症候群の特徴③:過度な完璧主義

自分自身に過度な完璧主義を求めることもあります。
自分のミスや失敗をなかなか許容できず、何事も完璧にこなすことを目指します。

しかし、こうしたバイアスがあると、過度なストレスやプレッシャーを感じることにもつながるため、自分の能力に対する不信感をかえって増長させる結果を招きがちです。

克服するために:周囲からの評価を素直に受け入れる

自己評価の高い社員が周囲や上長から低いフィードバックを受けると「適切に評価されてない」という不満を抱く場合が少なからずあります。

一方で、自己評価の低い社員はそういった葛藤に悩まされずに済むかもしれませんが、自己評価が低いがゆえに新しい挑戦を拒み、自らの可能性を狭めてしまうことにもなりかねません。
そうして動かないでいると、さらに自信が無くなる悪循環に陥ってしまいます。
常に変化が求められる今の時代に過度に謙虚であることはもはや美徳ではなく、むしろ自分や周囲の成長の妨げにもなってしまいます。
 
自己評価は自己評価として、少なくとも社会人としての自分は周囲からのフィードバックを素直に・前向きに受け入れ信じてみるのが、インポスター症候群克服の第一歩だと思います。

自分に自信がなくても、また過去に否定的な経験や評価を受けたことがあったとしても、今の周囲からの客観的な評価こそが、今後の仕事のしかたを考えるうえで最も重要なのではないでしょうか。

「新しい挑戦」や「周囲からのサポートを受け入れること」を前向きにとらえる

周囲とのコミュニケーションを積極的に取ることも一つの方法だと思います。

高い評価を受けることで、自分の実力に不釣り合いなポジションについたり、難しい仕事を任されて失敗することを恐れるのもインポスター症候群の傾向の一つです。
そのときに自分だけで頑張ろうとせず、周囲の力を適切に借りることができれば、新しい挑戦を重たく捉えすぎず、前向きな気持ちで臨むことができるかもしれません。
 
ただ、低い自己評価に囚われないことも重要ですが、他人との比較や外部からのプレッシャーに囚われないこともまた重要です(評価と期待は別物です)。
周りの人がどのように評価やプレッシャーと向き合っているのかを知ることを通して、自分の感情や日々の業務に新しいアプローチで向き合うことができるようになり、自己評価の問題を解決する糸口を掴める可能性があります。
 

常に何らかの新しい挑戦をしていくことで、自然と自信がついていくこともあるかと思います。

「ありのままの自分」を受け入れる

それでも、すぐにはインポスター症候群を克服できないこともあるでしょう。
そのときは、自信がない「ありのままの自分」を受け入れてしまうのもアリではないでしょうか。
自己評価が低いことを「悪いこと」だと機械的に捉えてしまうと、そのこと自体がますます自信を無くす原因になってしまう気がします。

「自分はこうでなくては」という気持ちに流されず、今の自分の在り方を「それはそれ」として認識して受け入れられれば(必ずしも肯定できなくても)、周囲との比較やプレッシャーも受け流せるようになることにつながり、伸び伸びと自分の力を発揮できるようになるかもしれません。