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資金移動業者の行政処分事例(令和4年9月2日)

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主任コンサルタント 清水 侑

サポート行政書士法人秋葉原支店の清水です。

資金移動業者は、管轄の財務局から行政処分を受ける場合があります。以下に資金移動業者に対する最近の行政処分事例を載せます。

令和4年9月2日、関東財務局はある資金移動業者に対し、資金決済法第55条の規定に基づき、業務改善命令を発出しました。業務改善命令の内容は以下の通りです。


<業務改善命令の内容>

(1)資金移動業の適正かつ確実な遂行のため、以下に掲げる事項について業務の運営に必要な措置を講じること。

・経営管理態勢の構築(内部管理態勢及び内部監査態勢の構築を含む。)
・法令等遵守態勢の構築
・外部委託先管理態勢の構築
・マネー・ローンダリング及びテロ資金供与リスク管理態勢の構築

(2)上記(1)に関する業務改善計画(具体策及び実施時期を明記したもの。)を令4和年10月3日までに提出し、提出後、直ちに実行すること。

(3)上記(2)の実行後、当該業務改善計画の実施完了までの間、3か月毎の進捗・実施状況を翌月10日までに報告すること(初回提出基準日を令和4年10月末とする。)。

それでは、どのような理由で処分されたのでしょうか?

<処分の内容>

関東財務局によると、金融庁による立入検査の結果、経営管理態勢、外部委託先管理態勢、マネロン・テロ資金供与リスク管理態勢について以下の重大な問題が認められたとされてます。

(1) 経営管理体制
経営陣の十分な関与不足から、取締役会が正しく機能せず、内部管理態勢や内部監査態勢が適切に整備されていなかったため、資金移動業務の適正かつ確実な遂行に必要な体制整備が不十分であったことから、以下の(2)・(3)に記載する態勢不備が認められたとされています。

(2) 外部委託先管理体制
取引時確認業務など、主要な業務の大部分を当社の親会社等に委託していましたが、再委託や再々委託についての把握が不十分であり、委託先が当該業務を適正かつ確実に遂行しているかを検証していなかったため、法第50条に定められる委託先に対する指導や委託業務の適正かつ確実な遂行を確保するために必要な措置が講じられていなかったことが明らかになったとされています。

(3) マネロン・テロ資金供与リスク管理体制
事業規模の拡大に応じた適切なマネロン・テロ資金供与リスク管理体制の構築を十分に行ってこなかったため、犯罪収益移転防止法に違反する事例が発生したとされています。具体的には、取引目的や職業の未確認による違反です。また、取引時の厳格な確認を行う態勢が不十分であり、疑わしい取引の判断に係る規程の不備があったようです。さらに、マネー・ロンダリングやテロ資金供与対策に関するガイドラインにおいて求められる対応が不十分であったことが指摘されました。

一方、資金移動業者及び資金移動業の登録申請を希望する事業者にはどのような影響があるでしょうか?

私と私の顧客が実際に体験したことは「(2)外部委託先管理体制」です。

資金移動業の登録申請を希望する事業者が親会社に業務の大部分を委託する場合だったのですが、関東財務局から「子会社である貴社が親会社の適切な業務運営を本当に指示監督できるのか」「どうやってそれを担保するのか」といった点を重点的に質問されました。その際、当局の担当者から「実際に親会社に業務の大部分を委託していた資金移動業者が、不適切な外部委託先管理をしていた事例がある」と話をしていたのを思い出します。行政処分は、既存の資金移動業者の監督だけではなく、資金移動業者への登録申請審査にも影響を及ぼします。

行政処分の公表情報を参考にするのは、既存の資金移動業者、これから資金移動業登録を希望する事業者にとって有益になりえます。ぜひ参考になさってください。

参照:関東財務局のウェブサイト

https://lfb.mof.go.jp/kantou/kinyuu/pagekthp0270000010.html