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■資金移動業者の行政処分事例から読み解く(2023.3)

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報道発表
  • 2022年12月2日、関東財務局はFSR Holdings株式会社(以下「当会社」)の資金移動業者の登録を取り消したことを発表した。
  • 理由は、当会社は登録を受けた営業所の所在地が確認できないことである。

【出典】

・「FSR Holdings株式会社に対する行政処分について」

規制解説

・登録の取り消し等

  資金決済法第56条第2項では、資金移動業者が営業所の所在地や代表者の所在が不明確な場合に、内閣総

  理大臣が登録取り消しを行うとしている。具体的には、内閣総理大臣が資金移動業者の営業所の所在地や

  代表者の所在を確認できない場合、内閣府令で定める手続きに従って、その事実を公告する。そして、公

  告の日から30日以内に当該資金移動業者から申出がない場合、内閣総理大臣は当該資金移動業者の登録を

  取り消すことができるというのもの。

専門家の視点
  • 登録を受けた営業所の所在地が確認できなかったために、資金移動業者の登録が取り消された事案。資金移動業者は主な営業所の所在地が登録され、一般の人々が閲覧できるように公開されている。当局の立場からするとこの規制は当然である。登録された営業所の所在地が確認できないとすれば、そもそも事業の実態が存在しているかに疑念が生まれる。また、当局が必要に応じて実施する立入検査ができなくなる(資金決済法第54条に基づき、当局は資金移動業者の営業所その他の施設に立入検査をすることが可能)。加えて、もしこの規制がなければ、一部の不正な資金移動業者は営業所の所在地や代表者の所在を不明確にして規制を逃れることが可能になるという事情がある。
  • 本件について言えば、当会社の事業の実態性が本当にあったかどうか疑わしいといえる。通常、行政処分を受ける場合には対象の事業者は何らかの声明を出すものであるが、弊社が検索した限り確認できなかった。当会社のものと思われるウェブサイトはあるが、事業が運営されている様子が見えない。また、当局は行政処分をする前に事業者に連絡をするものであるし、公告後に30日間の申出期間も設けているが、それにも関わらずこの問題が解決できなかった。
  • 資金移動業者の登録が取り消しされるのは、営業所の所在地や代表者の所在が不明確な場合に限らない。登録時に確認された登録拒否要件(資金決済法第40条第1項)に該当するとき、不正の手段によって登録を受けたとき、第一種資金移動業を営んでいるにもかかわらず認可された業務実施計画によらなかったとき、資金決済法若しくはこの法律に基づく命令、これらに基づく処分又は認可に付した条件に違反したときも、内閣総理大臣は登録の取り消しができる定められている。資金移動業者は、登録されたら終わりではなく、その後も登録申請時同様、それ以上の緊張感をもって法令順守態勢に則った業務をすることが必要だ。

[執筆者情報]

主任コンサルタント 行政書士 
清水 侑