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指摘事例 第62条 改善

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第62条 改善

省令

製造販売業者等(限定第三種医療機器製造販売業者を除く。)は、その品質方針、品質目標、監査の結果、データの分析、是正措置、予防措置及び管理監督者照査を通じて、継続的に品質管理監督システムの妥当性及び実効性を維持するために変更が必要な事項を全て明らかにするとともに、当該変更を実施しなければならない。

2 製造販売業者等は、通知書の発行及び実施に係る手順を確立し、これを文書化するとともに、当該手順を随時実施できるものとしなければならない。

3 製造販売業者等は、実施した製品受領者の苦情に係る全ての調査について、その記録を作成し、かつ、これを保管しなければならない。

4 製造販売業者等は、前項の調査の結果、当該製造販売業者等を含む品質管理監督システムに必要な工程に関与する全ての者以外の者による業務が製品受領者の苦情の一因であることが明らかになった場合においては、関連情報を関係する当該者との間で相互に伝達しなければならない。

5 製造販売業者等は、ある製品受領者の苦情について、それに基づく是正措置又は予防措置(限定第三種医療機器製造販売業者にあっては、是正措置に限る。)を行わないこととするときは、その理由について承認し、記録しなければならない。

6 製造販売業者等(限定第三種医療機器製造販売業者を除く。)は、製品(限定一般医療機器に係る製品を除く。)に関し、施行規則第二百二十八条の二十第二項 各号の事項を知った場合において同項の規定に基づき厚生労働大臣に報告するための手順を確立し、これを文書化しなければならない。

通知

第62条(改善)関係

(1)この条は、ISO13485:2003 の「8.5.1 Improvement – General」に相当するものであること。

(2)第2項の「通知書」とは、第2条第25 項に規定されているとおりであり、例えば回収を行う際に関係者に通知する文書が含まれうるものであること。また、「通知書の発行及び実施に係る手順書」においては、次に掲げる手順を含めるべきものであること。

ア. 当該工程の責任者が不在でもその手順が実施できるような管理体制

イ. 是正措置の開始を決定する管理者の階層及び影響を受ける製品の特定方法

ウ. 返品の処分。例えば手直し、再包装及び廃棄を決定する仕組み

エ. 連絡の仕組み

(3)通知書への記載事項には、次に掲げる事項が含まれるものであること。

ア. 当該製品に係る医療機器等の名称

イ. 当該製品に係る医療機器等のロット番号又は製造番号

ウ. 通知書を発行する理由

エ. 予想される危害

オ. 講ずるべき処置

(4)第3項の製品受領者の苦情についての調査は、第55条の規定も踏まえ適時適切に行うべきものであること。

(5)第6項の規定を踏まえ、製造販売業者等は不具合に関する事項を知った場合において、当該事項を厚生労働大臣に通知するための手順書を作成し、適正に実施することが求められていること。また、併せて回収の必要性についても検討し、必要な措置を行うこと。なお、製造販売後安全管理に関する業務を行う場合にあっては、第69 条の規定に留意すること。

指摘事例

是正措置不要の判断

・誤出荷の件に関する物流クレーム処理票において、是正・予防措置が「否」と判断されていたが、是正措置を実施しない理由について、記録がなかった。

・顧客からの苦情について記録された「付帯サービス記録」(病院 a)では、是正を行わなかった理由や、それを誰が承認したのかが明らかではなかった。

・製品受領者の苦情について、それに基づく是正措置又は予防措置を行わないこととするときは、その理由について承認し、記録する手順がなかった。

・品質管理監督システム基準書では、是正措置又は予防措置を行わないこととするときは、修理業責任技術者がその理由について承認することになっていた。

・製品受領者の苦情について、是正処置を実施しない場合の「理由とその承認」に関し記録されていなかった。

・全ての製品受領者からの苦情の記録はシステム内に適切に維持されていたが、是正措置又は予防措置を行なわないとする理由が承認及び記録されていなかった。

・製品受領者の苦情について、是正措置又は予防措置が必要かどうかを検討していなかった。また、製品受領者の苦情について、是正措置又は予防措置が必要か検討する手順を確認出来なかった。

不具合報告の手順

・(不具合等報告)第 62 条:省令 169 号 第 62 条 第 6 項で要求されている「不具合報告手順書」がなかった。

・「品質情報・不良等処理手順」では、製品受領者の苦情の調査をすべて製造販売業者が実施する手順となっていたが、実際は登録製造所で実施しており、手順書の内容と実運用に違いがあった。

・手順書において、施行規則第228 条の20 第2 項各号の事項及びこれに類する事項を知った場合には、事実を知った時点から15 日以内に、厚生労働大臣へ報告することが定められているが、誰がどのように報告を実施するのか、具体的な手順は定められていなかった。

・「医療機器の品質管理及び製品後安全管理業務に関する手順の総則」は、改正された施行規則や関連する「薬食発 1002 第 20 号平成 26 年 10 月 2 日医薬品等の副作用等の報告について」に対応していなかった。

苦情記録の管理

・「改善」では「製造販売業者等は、実施した製品受領者の苦情に係る全ての調査について、その記録を作成し、かつ、これを保管しなければならない。」を要求している。製品に関するクレームを、データベースである調査票で管理していた。クレームの原因を調査し、その結果を顧客にフィードバックしていたが、調査結果が記録されていなかった。

・「改善」では、「製造販売業者等は、実施した製品受領者の苦情に係る全ての調査について、その記録を作成し」、かつ、これを保管しなければならない。」を要求している。しかし、記録の作成に関し、その詳細が明確にされていなかった。

・「改善」では「製造販売業者等は、実施した製品受領者の苦情に係る全ての調査について、その記録を作成し、かつ、これを保管しなければならない。」を要求している。しかし、部品の弁の絞りが悪く血液が漏れるクレーム(H27 年○月○日)に関し、クレームの原因を調査し、その結果を顧客にフィードバックしていたが、調査結果が記録されていなかった。

・製品受領者からの苦情の取扱いについて、以下の不備が認められた。

① 不具合返却品に対して行われた原因調査について、どのような調査が行われたのか記録を確認することができなかった。

② 製造元に対する是正要求について、製造元の調査報告書を評価したことを示す記録を確認できなかった。

・製品受領者からの苦情を受ける構成員が、適切な判断基準に従い苦情に該当するかどうかを判断していることを確認出来なかった。また、実施した製品受領者の苦情に係る全ての調査について、その記録を作成し、かつこれを保管していることを確認出来なかった。

・苦情に係る調査を実施した場合に、当該調査に係る結果の一部しか記録されていなかった。

・苦情に係る調査に関する記録が作成されていなかった。具体的には、A社から報告書を受理しているものの、苦情処理書が作成されていなかった。

通知書発行の手順

・通知書の発行手順が確認できない。

解説

コメント

・苦情処理の重要な点。(条文3-5)

→苦情処理手順の文書化は要求されていないが、漏れのないようにするため、明文化しておくことが望ましい。また、苦情処理ではとにかく記録が重要となる。

・苦情調査記録の内容。

→顧客の情報、受付日、受付した人、事象の発生日、苦情内容、被害の程度、応急処置の内容、被害があった場合のその後の経過、顧客の要求内容、発生原因など。

・組織外での活動が苦情の一因であったときの対処。

→購買先やアウトソース先と情報交換し、必要な改善・処置をとる。

・是正・予防を行わないレベルの事象の注意点。

→どんな小さなことでも、処置を実施しないこととしたときは権限者の承認を得る。きちんと理由・記録を確認し、権限者がクローズする仕組みが重要。

・通知書発行は「即実可能な状態」にしておくこと。

→「すぐにやる」とは例えば安全に関する情報を知り得てから10日以内など。ただし、被害の度合いによっても時間の感覚は変わるので適切な期限を設ける。

・通知書の役割。

→補足的情報を提供したり、採るべき処置を助言するもの。

・通知書において、製造業者がやるべきこと。

→市場に責任を持つのは製造販売業者であるから、通知書は製造販売業者が発行する。そのため、製造業者は通知書が適切に発行されるように製造上知り得た情報や、供給者からの情報など不具合情報を速やかに製造販売業者に提供する体制や手順を確立しておく。

・不具合報告。

→実際の報告先はPMDAとなる。報告期限は15日又は30日以内。次の事例で報告が必要となる。

①死亡・障害の発生

②死亡・障害につながる恐れのある症例

③治療のために入院・入院の延長が必要とされる症例

④上記の準じて重篤な症例

⑤後世代における先天性の疾患・異常

・輸出している場合の手順。

→各国の法規制に合わせて、報告事項・報告先・期限をまとめておく。報告期限の起点は各国によって違う。報告内容も「ユーザーミス」「当該国以外での事象」も含む場合があるので注意。

・通知書の発行手順は整っているか。

→通知書発行手順の文書化は要求事項。製造業者としての手順も必要。

・責任者が不在でも通知を発行できるか。

→責任者が休暇・出張中の時で発行できるよう代行者を定めて発行できるようにしておく。

・苦情の処理方法が具体的に規定されていない。

→責任者が休暇・出張中の時で発行できるよう、代行者を定めて発行できる手順にしておく。

・苦情処理方法は具体的か、抽象的な表現はないか。

→「遅滞なく」など不明確な表現をしない。記録の作成・保管についての規定も。是正予防を実施しないなら理由の明記と承認を必ず。