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指摘事例 第26条 製品実現計画

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第26条 製品実現計画

省令

製造販売業者等は、製品実現に必要な工程について、計画を策定するとともに、確立しなければならない。

2 製造販売業者等は、前項の計画(以下「製品実現計画」という。)と、品質管理監督システムに係るその他の工程等に係る要求事項との整合性を確保しなければならない。

3 製造販売業者等は、製品実現計画の策定に当たっては、次に掲げる事項を、明確化しなければならない。

 

一 当該製品に係る品質目標及び製品要求事項

 

二 当該製品に固有の工程、当該工程に係る文書の策定及び所要の資源の確保の必要性

 

三 所要の検証、バリデーション、監視、測定及び試験検査に係る業務であって当該製品に固有のもの並びに製品の出荷の可否を決定するための基準(以下「出荷可否決定基準」という。)

 

四 製品実現に係る工程及びその結果としての製品が製品要求事項に適合していることを実証するために必要な記録

4 製品実現計画は、製造販売業者等が当該製品実現計画を実行するに当たって適した形式で作成しなければならない。

5 製造販売業者等は、製品実現に係る全ての工程における製品のリスクマネジメントに係る要求事項を明確にし、当該要求事項に係る適切な運用を確立するとともに、これを文書化しなければならない。

6 製造販売業者等は、リスクマネジメントに係る記録を作成し、これを保管しなければならない。

通知

第26 条(製品実現計画)関係

(1) この条は、ISO13485:2003 の「7.1 Planning of product realization」に相当するものであること。

(2) 製品実現計画は、第14 条第1項の品質管理監督システムの計画と相矛盾せずに、個別の製品について、製品実現に関連する工程に関し策定されるものであること。

(3) 第2項の「品質管理監督システムに係るその他の工程等」とは、品質管理監督システムには含まれるが、製品実現計画には含まれない工程のことを示しており、例えば、管理監督や是正措置、予防措置等が含まれうること。

(4) 第4項の「当該製品実現計画を実行するに当たって適した形式」とは、当該計画は製造販売業者等によって特定の形式にとらわれずに作成してよいが、文書化するなど、計画を実行するために適した形式で作成するものであること。

(5) 第5項の「製品実現に係る全ての工程における」とは、第5節の製品実現に係る各工程全てを見渡した上で、そのうちリスクマネジメントの対象とすべきもの及びその結果を適用すべきものについて、という趣旨であること。

(6) 第5項の「リスクマネジメントに係る要求事項」の作成にあたっては、製品に係る一般的なリスクマネジメントの要求事項に関してまず作成した上で、個々の製品の製品実現計画の策定に際し、当該製品の特性等を勘案の上、具体的に作成することが望ましいものであること。

(7) 第5項、第6項の規定に基づくリスクマネジメントに係る要求事項の明確化、運用の確立、文書化、記録の作成及び保管は、第4条第1項の規定に基づき設計開発に係る規定(第30 条から第36 条まで)が適用されない医療機器等についても求められるものであること。

指摘事例

製品実現計画

・「品質マニュアル」7.1.2 3)c)では、「所要の検証、妥当性確認、監視、測定及び試験検査に関わる業務であって当該製品に固有のもの並びに製品の出荷の可否を決定するための基準(以下「出荷可否決定基準」という。)」と規定され、「出荷可否決定基準」が参照されている。しかしながら、「出荷可否決定基準」を確認したが、申請品目である医療機器プログラムの製品の可否決定の基準が確認できなかった。

・製品重量及び射出温度がほぼ同じでありながら、金型温度に対して温度調節器を使用している場合と、温度調節器を使用していない場合があった。金型認定時の標準成形品と温度調節器を使用していない現状品との比較を行おうとしたが、金型認定時の標準成形品が保管されていなかった。

・製品実現の計画として「製品標準書」の詳細説明で「製品及びサービス提供の管理規定」の中に製造工程の順序及び作業内容、管理ポイント、必要工具治具測定器など具体的な作業が行える内容が確認できなかった。(例:QC工程図等)

リスクマネジメント

<リスクマネジメントの範囲>

・JIS T 14971:2012 に基づきリスクマネジメントを実施する規定となっていたが、「製造後の情報」に基づくリスク評価の手順がなかった。

・「品質クレーム発生連絡書」では、リスク分析フィーバック要否について品質部署長が判断することになっていたが、実施されていた要否は設計に対するものであり、“組立”“保管”に係る要否まで確認することができなかった。

・リスクマネジメントを実施した”製品A ”において、製品実現に係る全ての工程に言及した内容ではなかった。

・一部の工程において、製品のリスクマネジメントに係る要求事項が明確にされておらず、また当該要求事項に係る適切な運用が文書化されていなかった。

・リスクマネジメントの対象には、今後、承認/認証を取得する製品のみであり、既に承認/認証を受けた製品が含まれていなかった。また、そのように区別して取り扱う正当な理由を確認できなかった。

・工程を委託する国内外の登録製造所で実施されたリスクマネジメントの結果を把握していなかった。

‣同一 QMS 組織内である国内保管製造所の作業に係るリスクマネジメントが実施されていなかった。

‣リスクマネジメントは、新たに設計開発が適用される品目のみを対象としており、既存品目の変更に際してリスクマネジメントを見直す手順が確立されていなかった。

‣製品実現に係る全ての工程における製品のリスクマネジメントを適切に実施していることを確認できなかった。

‣リスクマネジメントを実施する範囲が明確になっておらず、保管・輸送工程に係るリスクマネジメントを実施したことを確認できなかった。

‣国内での実施工程(添付文書作成)をリスクマネジメントの対象としておらず、記録を作成保管していなかった。

<リスクマネジメントに係る要求事項書>

・リスクマネジメントに係る要求事項書が作成されていなかった。

・「リスクマネジメント要領」には、「個々の危険状態に対するリスク推定」が規定されていなかった。

・リスクマネジメントの見直しを行う為の要求事項が「リスクマネジメントに係る要求事項書」で文書化されていなかった。

・「リスクマネジメントに係る要求事項書」では、製品実現に係る工程の範囲が文書化されていなかった。

・海外本社で実施されたリスクマネジメントを製造販売業者で評価していたが、その実施に関する手順を確認できなかった。

・JIS T 14971:2012 に基づきリスクマネジメントを実施する規定となっていたが、クレーム情報からリスクマネジメントの必要性を評価し、必要に応じリスクマネジメントを実施する手順が明確にされていなかった。

・顧客クレームに関し、「異常事項報告書」に基づき是正処置を行った場合は、必要に応じたリスクマネジメントを実施していたが、この運用を文書化していなかった。

<リスクマネジメントの運用>

・今回の申請品目である製品のリスクマネジメントが実施されていなかった。

・製品のリスクマネジメント結果報告書では、リスクコントロールとして、部品a を重要としていたが、製造工程における「部品a の試験確認」は、リスクコントロールとして、規定され いなかった。

・医療機器プログラムに係る「リスクマネジメント報告書」を確認したが、リスク低減方法として決定された内容が「添付文書(案)」に記載されていなかった。また、「添付文書(案)」の「禁忌・禁止」及び「使用上の注意」に使用する際に行ってはいけない行為が記載されており、この内容は使用時にリスクがある為、記載されていると判断されるが、「リスクマネジメント報告書」には、ハザードの特定がされていなかった。

・文書化している「リスクマネジメント手順書」の中で経営者の責任において“リスクマネジメントプロセスの適切性のレビューをマネジメントレビューで実施する“と定めていた。しかしながら、マネジメントレビュー実施記録には、リスクマネジメントプロセスの適切性に関する報告についての客観的証拠の提示がなかった。

・手順書では、製造元がリスクマネジメントを見直した際にその結果を入手し、「市販後のリスクマネジメント」として自社で見直することが規定されていた。しかしながら、これまで製造元でリスクマネジメントの見直しが行われたことを把握できておらず、その結果を入手できていなかった。

・A 社は、設計及び製造を調査対象品目の製造元に委託しており、当該製品実現工程に関するリスクマネジメントについても、委託し、その結果を確認することとしていた。しかし、リスクマネジメントの結果は入手しているものの、リスクコントロール手段として利用者への安全に関する情報の提供が選択されたものがないか確認していなかったため、リスクコントロール手段が適切に実施されていることが不明確であった。また、A 社が責任を持つ製品実現に係る工程(添付文書の作成に係る工程、包装・表示・出荷に係る工程、製品の保管に係る工程等)に関するリスクマネジメントが実施されていなかった。

・製品の品質等に関する情報を入手した場合、リスクマネジメントを行う必要があるかどうか検討し、必要と判断した場合にリスクマネジメントを実施していることを確認できなかった。

・リスクマネジメントにおいて、次の不備を確認した。

(1) リスク低減措置として「検査の強化」等が記録されていたが、当該措置の実施結果が記録されておらず、実際に当該措置がとられていることが確認できなかった。(「検査の強化」のような表記の場合、具体的な強化策がわかるようになっていること)

(2) 製造及び製造後情報に基づくリスクの再評価に関する活動の計画が立てられていなかった。

・製品実現に係る全ての工程における製品のリスクマネジメントに係る要求事項として作成した医療機器リスクマネジメント手順に基づきリスクマネジメントを実施していなかった。

(1) リスクコントロール手段の実施結果を記録していないため、リスクマネジメント実施記録から結果をトレースできなかった。

(2) 手順に規定した能力を有する構成員がリスクマネジメントを実施していることを確認出来なかった。

(3) 製造情報、市販後情報に基づきリスクマネジメントを実施する仕組みを確認できなかった。

<リスクマネジメントに係る記録>

・リスクマネジメントの記録が作成されていなかった。

・申請品のリスクマネジメント記録に、危険状態が規定されていなかった。

・「リスクマネジメントに係る要求事項書」では登録製造所で実施したリスクマネジメント結果を確認し、「リスクマネジメント実施確認票」に記録することを規定していたが、記録が作成されていなかった。

・リスクコントロール手段の効果の検証活動に係る記録、検証記録番号を確認できなかった。

・リスクマネジメントに係る要求事項書において、輸入製品については、製造元のリスクマネジメント記録を確認することを、調査対象事業所におけるリスクマネジメントとすることが規定されていた。しかし、調査対象事業所では、製品の受入検査、包装・表示等の工程が存在するが、調査中に製品に係るそれらの調査対象事業所での工程に対するリスクマネジメントを実施した記録が確認できなかった。

・製品のリスクマネジメント記録において、使用におけるハザードで「キャリブレーションを行なわない場合、測定値に誤差が生じる可能性がある」はリスク評価でⅡ(好ましくない)となっており、手順書に従ったリスク低減対策が必要とされていた。しかしながらリスクコントロール欄には低減後の評価がなされていないにも拘わらず、全てが受容とされていた。

・製品のリスクマネジメント記録において全体が受容可能であることの判定記録がなかった。

・製品①及び製品①用プログラムの設計開発プロセスリスク分析シートにおいて、重大性が下げられている事例があった。しかしながら重大性を下げるためのリスクマネジメントに関わる記録を確認することができなかった。

・製品のリスクマネジメント記録において、以下の不備が確認された。

(1) 各ハザードに対する危害の発生頻度及び重大さはリスク分析表及びリスク評価表の双方に記録されているが、一部のハザードについて、発生頻度もしくは重大さが一致していない(例:箱詰め、ラベル貼り時の破損、汚損、ラベル貼り漏れ)。

(2) 出荷判定前の誤出荷というハザードに対して、リスク分析表/リスク評価表とリスクコントロール報告書とで発生確率と重大さのスコアが一致していない。

(3) 発生したその他のハザード/新たなハザードのコントロールの実行が実施されていない。

・製品のリスクマネジメント記録に関して、リスクマネジメントに係る要求事項書では登録製造所のリスクマネジメント記録を入手することになっているが、調査中に提示されなかった。

・リスクマネジメント記録(リスク分析、リスク評価、リスク低減)は作成されていた。しかしながら、リスク分析表のハザードが正当な理由なく削除され、リスク分析、リスク評価、リスクコントロール、残留リスク評価表には、4 項目のハザードしか挙げられていなかった。

・A 製品に係るリスクマネジメントは、設計に特化したもので、全ての工程におけるリスクマネジメントの記録はなかった。また、リスクマネジメントを実施する人についての適切な資格認定の記録もなかった。

・A 社はリスクマネジメントを製造元に委託していた。しかし、リスクコントロール手段として利用者への安全に関する情報を提供すると製造元が判断した事項について、A社の作成した添付文書等に適切に反映されていることを検証した記録が作成されていなかった。

・登録製造所であるA社はリスクマネジメントを実施していなかった。このような場合、製造販売業者がリスクマネジメントを実施することを手順書で規定していたが、作成した記録を確認できなかった。

・製品の変更に伴いリスクマネジメントが行われていたが、当概変更による新たなハザードの 可能性について検討されていなかった。

解説

コメント

・品質目標の制定方法が確立してあるか注意。

→どのように品質目標を定めるか明確にし、それに基づいて誰が定めるかまで文書化しておく。

・品質目標の達成状況が判定可能か。

→抽象的だと判定できないので、具体的な目標を設定する。

・リスクマネジメントは全ての工程でする仕組みになっているか。

→全ての工程で要求されているので、漏れている工程はないか確認する。省略する場合は、類似のリスクマネジメントの結果の引用をするなど理由が明確にできていなければ不適合になりかねない。

・リスク低減を前提に手順を確立する。

→リスク分析フィードバック要否まですべての工程で行う。