建設業許可は500万円以上の工事で必要?未満との違いや要件を解説
更新日:2025年9月5日

建設業を営む上で、一定規模以上の工事を請け負う際には建設業の許可が法律で義務付けられています。
その重要な基準となるのが「請負金額500万円」というラインです。
この金額を正しく理解していなければ、意図せず法令違反を犯してしまうリスクがあります。
この記事では、建設業許可が必要となる具体的な金額の基準、計算する際の注意点、そして無許可で工事を行った場合のペナルティについて詳しく解説します。
◆もくじ◆
「請負金額500万円」が建設業許可の有無を分ける基準

建設業法では、建設工事を請け負う事業者は原則として建設業許可を取得しなければならないと定めています。
しかし、例外として「軽微な建設工事」のみを請け負う場合は、許可がなくても営業することが可能です。
この「軽微な建設工事」に該当するかどうかを判断する主要な基準が請負金額であり、建築一式工事以外のほとんどの専門工事において、請負金額が500万円以上の工事を請け負う場合に、建設業許可が必要となります。
許可が不要な「軽微な建設工事」の2つのケース
建設業許可なしで請け負うことが認められている「軽微な建設工事」は、工事の種類によって金額の基準が異なります。
具体的には、複数の専門工事を統合して行う「建築一式工事」と、それ以外の個別の「専門工事」とで、許可が不要となる上限金額が大きく違います。
この区分けを正確に理解し、自社が受注する工事がどちらに該当するのかを把握しておくことが、法令を遵守した事業運営の第一歩となります。
【建築一式工事】請負金額1,500万円未満の工事
建築一式工事とは、元請業者の立場で総合的な企画、指導、調整のもとに建築物を建設する工事を指し、個別の専門工事とは区別されます。
この建築一式工事において許可が不要となる「軽微な建設工事」は、請負金額が1,500万円未満(消費税込み)の工事、または延べ面積が150平方メートルに満たない木造住宅工事のいずれかに該当する場合です。
したがって、これらの基準を超える大規模な新築工事や増改築工事を元請として請け負うには、建築一式工事の建設業許可が必須となります。
ただし、複数の専門工事を単に組み合わせて施工するだけでは建築一式工事とはみなされないため、工事の実態に即した判断が求められます。
【建築一式工事以外】請負金額500万円未満の工事
建築一式工事以外の、大工工事や内装仕上工事、塗装工事といった27種類の専門工事においては、許可が不要な「軽微な建設工事」の基準は、請負金額が500万円未満(消費税込み)であることです。
つまり、請負金額が税込で500万円以下の工事であれば、建設業許可を取得していなくても受注できます。
多くの専門工事業者はこの範囲内で事業活動を行っていますが、注意すべきは、この基準を回避するために意図的に契約を分割する行為は認められない点です。
工事の実態が一つであると判断されれば、分割された契約金額は合算して計算されるため、正確な金額の把握が重要になります。
請負金額を計算する際の3つの重要ポイント

建設業許可の要否を判断する請負金額の計算には、表面的な契約金額だけでなく、考慮すべきいくつかの重要なポイントがあります。
特に、消費税の扱いや材料費の計上、契約分割のルールを正しく理解していないと、気づかぬうちに基準額を超えてしまい、法令違反となる可能性があります。
適切な事業運営のためにも、これらの計算上の注意点を正確に押さえておくことが不可欠です。
ポイント1:消費税込みの金額で判断すること
建設業許可が必要かどうかを判断する際の請負金額は、消費税を含んだ税込の金額で考えなければなりません。
例えば、税抜きの契約金額が480万円であったとしても、消費税10%を加算すると総額は528万円となり、500万円の基準を超えるため建設業許可が必要となります。
見積書や契約書を税抜金額で作成している場合、見落としてしまうケースが散見されるため、常に支払総額を基準に判断することが重要です。
契約時には、税抜金額と消費税額、そして税込の合計金額を明確に記載し、許可の要否を確認する習慣が求められます。
ポイント2:材料費も合計金額に含めること
請負金額には作業員の労務費だけでなく工事に使用する資材の費用も含まれます。
特に注意が必要なのは発注者(施主)から材料が提供されるケースです。
この場合契約書上の金額が500万円未満であっても提供された材料の市場価格や運送費などを請負金額に合算して判断しなければなりません。
例えば請負契約が450万円で発注者から100万円相当の資材が提供された場合工事の規模は実質的に550万円とみなされ建設業許可が必要です。
材料費を切り離して請負金額を低く見せかけることは認められないため、工事全体の実質的な価値で判断することを理解しておく必要があります。
ポイント3:契約を分けても請負金額は合算されること
建設業許可の取得を回避する目的で、本来は一つの工事であるものを意図的に複数の契約に分割し、それぞれの契約金額を500万円未満に調整する行為は、建設業法で禁止されています。
工事の準備や施工時期、場所的な関連性などからみて、実質的に一つの工事と判断される場合は、分割したすべての契約金額を合算して許可の要否が判断されます。
例えば、建物の基礎工事と上物工事の契約を分けたり、1階と2階の内装工事を別契約にしたりしても、それらが一連の工事である限り、合計金額が500万円以上になれば無許可営業とみなされる可能性があります。
このような脱法行為は厳しく扱われるため、注意が必要です。
500万円未満でも専門工事の登録が別途必要な場合がある

請負金額が500万円未満で建設業許可が不要な工事であっても、工事の種類によっては別の法律に基づく登録や届出が義務付けられている場合があります。
代表的な例として、解体工事業、電気工事業、浄化槽工事業などが挙げられます。
これらの工事は、たとえ軽微な工事であっても、元請・下請の立場に関わらず、それぞれの専門工事業法に基づく登録を完了していなければ施工できません。
建設業許可とは管轄や要件が異なる別個の手続きであるため、自社が行う工事に関連する法制度がないか、事前に確認することが重要です。
無許可で500万円以上の工事を請け負った場合のペナルティ

建設業許可が必要であるにもかかわらず、許可を受けずに500万円以上の工事を請け負う行為は建設業法に違反します。
この違反が発覚した場合、厳しい行政処分や罰則の対象となります。
「知らなかった」「うっかりしていた」という言い分は通用せず、事業の存続に重大な影響を及ぼす可能性があります。
無許可営業のリスクを軽視することなく、その具体的な内容を正確に理解しておくことが健全な事業運営のために不可欠です。
法律違反による懲役または罰金
建設業許可を受けずに500万円以上の工事を請け負う無許可営業は、建設業法における罰則の対象となります。
具体的には、「3年以下の懲役または300万円以下の罰金」が科される可能性があります。
この罰則は、法人の代表者や個人事業主本人だけでなく、違反行為を直接担当した従業員なども対象となり得ます。
また、元請業者が、下請業者が無許可であることを知りながら基準額以上の工事を発注した場合も、監督処分の対象となることがあります。
無許可営業は単なる手続き上の不備ではなく、刑事罰につながる重大なコンプライアンス違反であることを認識しなければなりません。
許可の欠格要件に該当し5年間は取得不可に
無許可営業などの建設業法違反によって罰金以上の刑に処せられた場合、その刑の執行を終えてから5年間は建設業許可の「欠格要件」に該当します。
これは、将来的に事業を拡大するために許可を取得しようとしても、5年間は申請そのものが受理されないことを意味します。
この期間は500万円以上の工事を請け負うことができず、事業展開に大きな制約がかかります。
一度の違反が、罰金という直接的なペナルティに加えて、企業の成長機会を長期間にわたって奪うことになり、対外的な信用も大きく損なう結果を招きます。
まとめ
建設業において、請負金額500万円(建築一式工事の場合は1,500万円)は、建設業許可の要否を分ける極めて重要な基準です。
この金額は消費税込みで計算し、発注者から提供された材料費も合算して判断する必要があります。
また、許可を回避するために一つの工事契約を不当に分割することは認められません。
もし無許可で基準額以上の工事を請け負った場合、懲役や罰金といった厳しい罰則が科されるだけでなく、その後5年間は許可が取得できなくなるなど、事業の継続に深刻な影響が生じます。
法令を正しく理解し、自社の請け負う工事の規模を正確に把握した上で、誠実な事業運営を心掛けることが不可欠です。
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