【2025年法改正対応】カーポートの確認申請が必要なケース・注意点
更新日:2025年8月29日
「カーポートって、ただの屋根付き駐車スペースでしょ?」——そう思っている方、ちょっと待ってください。
2025年の建築基準法改正によって、その“ただのカーポート”が、実はしっかりした確認申請の対象になるケースが増えてきているんです。
特に不動産売買の場面では、見落とすとトラブルのもとに…!
この記事では、「確認申請ってそもそも何?」という基礎から、改正法のポイントまで、実務に役立つ情報をやさしく解説していきます。


◆もくじ◆
そもそも「確認申請」とは?
建築基準法における建築確認って?
「建築確認」とは、建物や工作物を新築・増築・改築・移転する際に、その計画が建築基準法や関係法令に適合しているかどうかを事前に審査・確認する制度です。
これに基づいて行う手続きが「建築確認申請(確認申請)」です。
確認申請は、所定の書類や図面を添えて、所管行政庁または指定確認検査機関に提出し、確認済証を取得することで完了します。
確認済証を取得せずに着工した場合、建築基準法違反となり、是正命令や罰則の対象になることがあります。
確認申請が必要なケース
建築物の規模や用途、設置場所により、確認申請が必要かどうかが決まります。
たとえば、都市計画区域内において10平方メートルを超える建築物(屋根と柱があり、地面に定着しているもの)は原則として確認申請が必要です。
カーポートも「屋根がある」「柱で支えられている」「地面に固定されている」といった条件を満たすため、一定規模以上であれば建築物と見なされ、確認申請の対象となります。
2025年法改正の概要とカーポートへの影響
2025年4月1日に施行された建築基準法の改正は、耐震偽装問題や違法建築の防止を背景とし、建築物の安全性確保を強化するために実施されました。
特に、小規模建築物に対する確認申請の審査体制の見直しが重要な柱となっています。
「4号特例」の廃止

従来は「4号建築物(木造2階建て以下、延べ面積500㎡以下など)」については、確認申請の構造審査が省略される「4号特例」が適用されていました。
しかし、今回の改正でこの特例は廃止され、構造計算や安全性の審査が必要となるケースが増えました。
これにより、従来は比較的簡単に設置できたカーポートについても、より厳格な審査が求められることになります。
カーポートは「新3号建築物」に分類
改正後、カーポートのような小規模な構造物は「新3号建築物」として位置付けられました。
これにより、従来よりも詳細な図面や構造の説明が求められる場合があります。
特に面積や構造がしっかりした製品を設置する場合、確認申請が不要だと自己判断するのはリスクが高くなりました。

構造安全性の審査(風圧・積雪など)

改正後は、設置地域の気象条件(強風地域・積雪地域)を考慮した構造安全性の審査が必要です。
たとえば積雪地域では、カーポートが雪の重みに耐えうる構造か、強風地域では風圧による倒壊リスクがないかを図面や計算で示す必要があります。
確認申請が必要なカーポートの条件は?
①延べ面積が10㎡を超える

都市計画区域内では、延べ面積10㎡を超えるカーポートは、建築物とみなされ確認申請が必要になります。
特に2台用やワイドタイプのカーポートはこの条件に該当しやすいです。
②都市計画区域・防火地域・準防火地域に設置
設置場所が都市計画区域内、または防火・準防火地域に該当する場合は、面積に関わらず申請が必要になることがあります。
火災延焼のリスクが高い地域では、より厳しい構造基準が適用されます。
③母屋と接続して増築扱いとなる場合

カーポートを母屋(既存建物)に接続する場合、「増築」とみなされることがあります。
接続の仕方によっては、既存建物全体の建築確認が必要になるケースもあるため注意が必要です。
④強風地域・積雪地域に設置する場合
設置場所が強風・積雪地域の場合、地域ごとに求められる耐風圧・耐雪荷重の基準を満たしていなければ確認済証が交付されません。
構造計算書の提出が求められる場合もあります。
申請上の注意点/申請しないデメリット
建築確認申請は、法令上の義務です。一方で、カーポートの設置の際の建築確認申請を怠っている施主・施工業者が現状多いです。
以下の申請上の注意点/申請しないデメリットを参考に、適切に建築確認申請を行いましょう。
基準を満たさない「リスクの高い物件」とみなされる
建築確認を受けていない建築物(カーポート等)があると、カーポートだけでなく、住宅などの物件全体で、「リスクの高い物件」となります。
役所等(建築主事)からのOKをもらえていないため、建築基準法で定める基準に適合していない可能性(リスク)が高い、ということです。
この「リスクの高さ」が原因で、様々な不利益を被る可能性があります。
- 後から別の増築などを行う際のリスク(ガーデンルーム設置、大規模模様替え等)
→「リスクの高い物件」は、工事を受注してもらえる施工業者が限られます(特に大手は厳しいです)。
また、受注される場合も割高になります。 - 補助金・助成金への影響
→適切に建築確認を受けていない物件ということで、住宅系の補助金・助成金の対象外となります。 - 不動産としての価値も下がる
→リスクがある分、住宅ごと売却する際に低額になります。また、ローンも組みにくくなり、そもそも買い手が見つかりにくくなります。
着工の前のタイミングで申請/後から申請不可
カーポート設置の前に建築確認申請をし、「確認済証」の交付を受けてから設置工事が可能となります。
設置した後、デメリットに直面してから建築確認申請をしたいと思っても、申請できません。
設置前に、きちんと申請を行いましょう。
建ぺい率にも注意!
見落とされがちですが、カーポートは建ぺい率の計算に影響を与える可能性があるため注意が必要です。
原則として、屋根がある構造物は建築物として扱われ、敷地面積に対する建築面積(=建ぺい率)に加算されます。ただし、柱のみで支えられているカーポートなどは「緩和措置」が適用される場合もあります(たとえば、外壁がなく、三方以上が開放されている場合は1/2不算入など)。
建ぺい率を超過している可能性がある物件では、建築確認が下りず、カーポートの構造や面積によっては是正指導の対象になることもあるため、事前の確認が不可欠です。
重要事項説明書(重説)への記載・不動産売買時の影響
2025年の建築基準法改正により、カーポートが確認申請の対象となるケースが拡大したことで、不動産売買時における重要事項説明書(重説)への影響も無視できなくなっています。
これまで見過ごされがちだったカーポートも、法的な扱いや設置状況によっては「重要な事項」として説明義務が生じることがあります。
売主・仲介業者ともに注意が必要です。

サポート行政書士法人では重説作成代行もやっています
まとめ
「カーポートくらいなら、申請なんていらないでしょ?」という常識は、もう通用しない時代になってきました。
2025年の建築基準法改正によって、10㎡を超えるサイズや防火地域での設置、母屋とつながっているタイプのカーポートは、原則として確認申請が必要に。
さらに、地域の気候(強風・積雪)によっては、安全性のチェックもバッチリ求められます。
この記事の監修者

井浪 竜馬

きちんと落とし穴を回避して、適切に申請を行いましょう!