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改正薬機法可決──コンビニで市販薬の販売が可能に

2025年5月14日に改正薬機法が可決・成立し、薬剤師不在のコンビニでも市販薬が購入できる新たな仕組みが動き始めます。
本記事では、本改正の重要ポイントと今後の販売体制の展望について分かりやすく解説します。

薬機法(正式名称:医薬品、医療機器等の品質、有効性および安全性の確保等に関する法律)は、医薬品や医療機器の製造・販売・使用に関する基準を定め、国民の健康と安全を守ることを目的としています。

本法は医薬品に加え、医療機器、化粧品、医薬部外品、再生医療等製品も対象とし、社会環境の変化や技術革新に合わせて定期的に改正されています。
旧来の「薬事法」から2014年に現行名称へ変更され、製品の品質管理、効能効果の確認、安全対策、販売ルールの整備など、流通全般を網羅しています。

2025年5月14日、参議院本会議で可決・成立した改正薬機法では、消費者の利便性向上とセルフメディケーション推進を目的に、これまで薬局のみが行ってきた市販薬の販売体制が大きく見直されました。

以下、重点的に押さえておきたいポイントを解説します。

市販薬の販売が可能となる店舗の範囲

従来、一般用医薬品(市販薬)は薬局や登録販売者が常駐するドラッグストアでしか購入できませんでした。
改正後は、薬剤師・登録販売者が不在のコンビニエンスストアや一部食品スーパーでも市販薬を販売できるようになります。
販売するためには、以下の要件を満たす必要があります。

  1. 同一都道府県内にある薬局やドラッグストアに所属する薬剤師・登録販売者が、ICTを利用して遠隔で服薬指導・管理を行うこと
  2. 薬の保管状況や販売手順について、定期的に当該薬局がチェックを実施すること
  3. 店舗営業時間に応じて、24時間販売を含む柔軟な販売時間の設定が可能なこと

対象チェーン例:ローソン、ファミリーマート、セブンイレブンなど、全国規模のコンビニエンスストア

この仕組みにより、夜間や早朝に頭痛や風邪の初期症状が出た際にも、手軽に薬を入手できる機会が生まれるとみられます。

調剤補助業務の外部委託

調剤業務のうち、ピッキング(薬の取り揃え)や包装、調剤にかかる事務作業といった補助的な作業を、同一都道府県内の他の薬局へ委託できるようになります。

これにより、薬局内の薬剤師は服薬指導や健康相談など、専門性の高い業務に集中することが可能となります。
また、中小規模の薬局においては、人的リソースの不足を補いながら在庫負担を軽減し、効率的な運営が可能になるメリットがあります。

販売における年齢制限の導入

若年層による医薬品の誤用や乱用(オーバードーズ)を防ぎ、安全性を確保するために、20歳未満への市販薬の大量・複数購入が原則禁止されます。

背景として、せき止め薬や一部の風邪薬に含まれる成分が、過剰摂取により健康被害を引き起こすおそれが指摘されていました。 これを受け、若年者の意思決定能力や服薬管理能力が十分でない場合に生じるリスクを軽減する目的で、制限が導入されました。

販売店舗では、以下の対応が義務付けられます。

  • 身分証明書による年齢確認
  • 購入目的や症状の聴取
  • 使用方法や副作用の説明

この仕組みにより、未成年者による誤用や乱用を未然に防ぎ、若年層が安心して市販薬を利用できる環境が強化されます。

薬剤師や登録販売者が常駐しないコンビニでも市販薬が買えるようになることで、消費者には次のような利点が考えられます。


利便性の向上
深夜や早朝、祝日など、薬局が閉まっている時間帯でもすぐに薬を購入できる。

時間と手間の節約
薬局まで遠くへ出かけなくても、近くのコンビニで必要な薬を手に入れられる。

情報アクセスの充実
タブレットやスマートフォンで薬効・用法説明を受けられる仕組みが整う。

・緊急対応の強化
急な頭痛や風邪の初期症状に対して、セルフメディケーションを迅速に開始できる。

・価格競争によるコスト削減
販売店舗が増えることでOTC薬の価格競争が促進され、一部の風邪薬や頭痛薬が手頃になる可能性がある。

参議院本会議での可決・成立を受け、改正薬機法は6か月以内に施行されます。
薬剤師や登録販売者が不在の店舗での一般用医薬品販売は、施行後2年以内に開始される予定です。

事業者側では、コンビニエンスストアやドラッグストアなど多様なチャネルを通じた販売体制の整備が進展すると考えられます。
例えば、ローソンやファミリーマート、セブンイレブンなどの主要チェーンとの連携モデルが検討され、オンライン服薬指導システムや定期的な品質チェックの仕組みが導入される方向です。

また、中小規模の薬局においては、調剤補助業務の外部委託を通じて対人サービスを強化する動きが見られるでしょう。
製薬企業では、「特定医薬品供給体制管理責任者」の配置や後発医薬品の安定供給策の推進が想定され、当局の指導命令への対応体制も整いつつあります。

これらの取り組みにより、新ルール下で安全かつ効率的な市販薬の提供が徐々に実現していくと期待されます。