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ルールチェンジを乗りこなせ!改正QMS省令

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令和3年3月26日、「医療機器及び体外診断用医薬品の製造管理及び品質管理に係る業務を行う体制の基準に関する省令の一部を改正する省令」(以下、改正QMS省令)が交付されました。経過措置期間は3年間となり、令和6年3月26日までに対応する必要があります。

主任コンサルタント
李博維

今回のルールチェンジ

■改正趣旨

今回の改正の目的は、ISO13845:2016への適合です。ISO13875は医療機器の品質マネジメントに関わる国際規格です。改正前のQMS省令は、2003年に発行されたISO13845:2003年に整合していました。2016年にISO13875が改正されたことに伴い、日本のQMS省令も最新の国際規格に対応した規制となりました。

 

■改正のポイント

●システムの確立実施維持【第5条】

QMS省令で「文書化」が求められる全て(要求事項、手順、実施要領、活動)について、確立実施維持しなければなりません。
 

≪文書化が求められるもの(例)≫

 ・使用するソフトウェアのバリデーション【第5条の6】

 ・品質管理監督文書の管理【第8条】

 ・記録の管理【第9条】

 ・管理監督者照査(マネジメントレビュー)【第18条】

 ・汚染された製品等の管理【第25条の2】

 ・苦情処理【第55条の2】

 ・厚生労働大臣等への報告(不具合等報告、回収)【第55条の3】

  他にも多数有り【逐条解説通知14(2)(3)参照】

:改正後新たに文書化が必要となるもの

●文書、記録の管理【第8条、第9条】

文書管理、記録管理について、下記の項目が新たに追加されました。

〈文書管理〉

 ・「劣化」、「紛失」の防止

〈記録管理〉

 ・「セキュリティ確保」

 ・「完全性の確保」

 ・「保有する個人情報(※)の管理」※医療機器等の使用によって得られたもの

リスクに基づくアプローチ【第5条の2】

製品(医療機器等)に係る機能、性能及び安全性に係るリスク並びに当該リスクに応じた管理の程度を明確にして、品質管理監督システムを確立させなければなりません。(★リスクベースアプローチ)

→つまり、QMSにおける工程管理について、製品実現に係る工程(プロセス)だけではなく、リスクに基づいた管理をする必要があります。
 

製品のリスクや各社の体制に応じて、実態に合った管理をすることが望ましい。【逐条解説通知6(9)】

●外部委託【第5条の5】

QMS製品要求事項への適合性に影響を及ぼす工程を外部委託する時、製品に関連するリスク及び外部委託を受ける事業者の能力に応じた方法により当該工程を管理しなければなりません。

(※)管理の方法について受託事業者と合意した場合には、合意した内容を品質に関する実施要領に定めなければならない。(限定一般医療機器に係る工程は除く。)【第5条の5第3項】

●品質管理監督システム等で使用するソフトウェアへのバリデーションの適用【第5条の6,第45条,第53条】(※)限定三種は除く。

下記①~③において、ソフトウェアを初めて使用するとき並びに当該ソフトウェア又はその適用を変更する時は、予めバリデーションを行わなければなりません。

 ① 品質管理監督システム【第5条の6】

 ② 製造及びサービスの提供【第45条】

 ③ 監視及び測定【第53条】

バリデーションの実施は、ソフトウェアの使用によるリスクに応じて、管理の程度を定めます。

 

≪対象となるソフトウェアの例(※)≫

①・製造指示等の基幹系システム(MES等)

 ・文書・記録の管理システム

 ・CAD(コンピュータによる設計支援ツール)

 ・苦情、不適合、是正・予防措置管理システム

②・医療機器等の製造や供給に附帯する業務(保守業務等)で使用するシステム

③・製品試験、工程の監視、測定等に使用するシステム

 ・計測器から計測した結果がパソコンに転送されて何らかの処理がなされる場合

(※)経理処理、事務処理等医療機器の品質・安全性又は有効性に影響しないソフトウェアは対象としない。【逐条解説通知10.(2)】

統計学的手法の適用【第34条,第35条,第45条】(※)限定三種は除く。

〇設計開発の検証、設計開発バリデーションで統計学的手法を用いる場合は、方法(検体数の根拠を含む)、判定基準を明確にして、計画を文書化しなければなりません。【第34条、第35条】

設計開発検証又は設計開発バリデーションの対象された製品に係る医療機器等が他の機械器具等と一体的に使用又は操作される医療機器等である場合においては、当該一体的に使用又は操作される状態を維持したまま設計開発検証を実施すること。【第35条】
又、設計開発を行った製品は、初回の製造に係る一群の医療機器等及びロットを考慮して、複数の製品から代表する製品を選択するとともに、当該選択の根拠を記録すること。【第35条】

〇製造及びサービスの提供に係る工程のバリデーションで、統計学的方法を用いる場合は、検体数の設定の根拠を含む手順を文書化しなければなりません。【第45条】

●汚染管理【第25条の2】(※)限定三種は除く。

滅菌医療機器等(製造工程において滅菌される医療機器等)の汚染の防止を管理するために必要な事項を文書化し、製品の組立又は包装の工程に係る清浄の程度を維持管理しなければなりません。

●供給者、購買物品等の管理【第37条,第39条】

供給された購買物品等について、購買物品等要求事項への不適合が判明した場合は、当該不適合によるリスクに応じて、供給者と協力して必要な措置(※)をとらなければなりません。【第37条】

(※)必要な措置…再発防止措置(供給者への通知、検体数の増加、供給者への是正措置の開始要求、供給者変更等)、第60条~第60条の4の規定に基づく管理、措置等。【逐条解説通知46.(5),(6)】

購買物品等の検証において、供給者の評価の結果に基づき、購買物品等に係るリスクに応じて検証の範囲を定めます。又、購買物品等を変更する場合、製品実現に係る工程又は医療機器等に及ぼす影響を検証しなければなりません。【第39条】

(※)変更は、第72条第2項第4号の規定を踏まえて検証する。【逐条解説通知48.(4)】

●苦情処理【第55条の2】

苦情を遅滞なく処理するために必要な手順を文書化しなければならないこととする。 受けた苦情について、調査を行わないこととする場合は、その理由を特定し、理由を文書化しなければなりません。

●特定医療機器から植込医療機器へ【第59条】(※)限定三種は除く。

特定医療機器に係る要求事項が植込医療機器に係る要求事項へと変更になります。

 

≪植込医療機器とは≫
人の身体内に埋設される若しくは人の身体の自然開口部に挿入される医療機器又は人の皮膚若しくは眼の表面を代替する医療機器であってその全部又は一部が30日以上留置されることを目的として使用されるもの【第2条第21項】

(※)法第68条の5第1項に規定する特定医療機器も含む。【逐条解説通知2.(21)】

参考:大阪府公式HP https://www.pref.osaka.lg.jp/yakumu/iryoukikikannkei/qms_amendment.html

■専門家の視点

改正QMS省令に基づく医療機器製造販売業者の対応について、以下のような対応が必要です。
①品質マネジメントシステム(QMS)の見直し

 ・改正QMS省令に適合するよう、品質マネジメントシステムを見直し、改訂する必要があります。

 ・見直したQMSは、改正QMS省令の規定に基づいて作成した「QMSマニュアル」、「手順書」、「規程」などの文書で体系化することが求められます。  

②品質保証体制の確立

 ・改正QMS省令において、品質保証体制の強化が求められています。

 ・品質保証体制を確立するためには、品質マネジメントシステムの見直しとともに、品質管理責任者の適切な配置、品質担当部署の強化、品質保証システムの構築などが必要となります。

③トレーサビリティの確保

 ・改正QMS省令において、製造過程のトレーサビリティの確保が求められています。

 ・トレーサビリティを確保するためには、製造・検査データの管理・保管の徹底、製造・検査工程の詳細な記録・管理、不良品・リコール対応の強化などが必要となります。

④従業員教育・訓練の実施

 ・改正QMS省令に適合する品質マネジメントシステムを構築・維持するためには、従業員の教育・訓練が欠かせません。

 ・従業員教育・訓練は、品質マネジメントシステムの内容やトレーサビリティの確保方法、品質管理責任者の役割・責任などを明確にして、従業員の理解を深めることが必要です。

⑤改正QMS省令に基づく内部監査の実施

 ・改正QMS省令に基づく内部監査の実施が必要です。

 ・内部監査は,組織における QMS の弱点がどこにあるか,何を改善しなければならないか,その実態を把握することにあります。

ルールチェンジを乗りこなすポイント

★QMSマニュアルの改訂をお早めに!

改正QMS省令に対応したQMSマニュアルを備える必要があります。またこれに伴い、手順書、規程についても大幅な追加・改訂が必要になります。QMSの構築には最低でも3ヶ月かかります。改正QMSを実際に稼働させるために、内容をしっかり理解することにも時間を要するので、半年前からの準備をお勧めしています。経過措置期間終了間際に慌てることがないよう、早めの対応をしましょう。