【犯収法施行規則改正】本人確認の方法について
投稿日:2025年7月2日
2027年4月に施行される改正犯収法施行規則により、特に非対面取引における本人確認方法が大きく見直されます。
従来広く用いられていた画像送信や書類の写しによる確認手段は原則として廃止され、ICチップや公的個人認証サービス(JPKI)を活用したより厳格な方法が推奨されるようになります。
また、改正番号利用法(2025年6月24日施行)によって、スマートフォンに搭載可能な「カード代替電磁的記録」による本人確認も新たに制度化され、行政手続のデジタル化との連動が強まっています。
本記事では、改正の全体像とその実務的影響について解説します。
犯罪収益移転防止法とは
犯罪収益移転防止法は、マネー・ローンダリングやテロ資金供与の防止を目的とし、国民生活の安全と経済の健全な発展を図る法律です。
金融機関や不動産業者などの特定事業者に対して、取引時確認、記録の作成・保存、疑わしい取引の届出などの義務を課しています。
国際的な要請や犯罪手口の高度化に対応するため、これまでも複数回の改正が行われています。
本人確認方法に関する主な改正内容
非対面での本人確認の厳格化(令和9年4月1日施行)
◆主なポイント
非対面での本人確認方法について、以下のような変更が予定されています。
(1)画像情報送信による本人確認方法の廃止
特定事業者が提供するアプリ等を通じて、マイナンバーカードの両面や厚みを撮影し、その画像を送信することで本人確認を行う方式が廃止されます。
偽造書類を用いたなりすまし等のリスクを踏まえた措置です。
(2)本人確認書類の写しの送付による方法の原則廃止
本人確認書類の写しを送付する方式も、原則として廃止されます。
ただし、規則第6条第1項第1号ヌに該当する一部の方法については、書留郵便等の転送不要郵便物として送付するなど、リスクが低いと評価される取引に限って継続が認められます。
(3)原本送付による確認で使用可能な書類の限定
本人確認書類の原本を送付する方法については、偽造防止措置が講じられている書類に限定されます。
例としては、印鑑登録証明書、戸籍の附票の写し、住民票の写し、住民票記載事項証明書などが該当します。
(4)非居住外国人等に対する例外的取扱い
非居住外国人等との非対面取引については、引き続き従前の確認方法(本人確認書類の写しと補完書類の送付、取引関係文書の転送不要郵便による送付など)に相当する方法が利用可能とされます。
これは、改正後も現実的な確認手段が確保されるよう配慮されたものです。
(5)法人の本人確認方法に関する見直し
法人顧客について、本人確認書類の写しによる確認方法は原則として廃止され、原本の送付が必要となります。
外国法人との取引については、本人確認書類の写しの送付も引き続き認められます。これにより、非対面での有効な確認手段を確保することが意図されています。
◆改正の背景と目的
この改正は、本人確認書類の偽変造等によるなりすまし等のリスクを低減するため、マイナンバーカードによる本人確認など、リスクが低い方法に一本化することを目的とするものです。
ICチップ付きの本人確認書類を保有していない顧客等や、非居住外国人等に対しても、非対面での取引に係る有効な確認方法が残るようにするために、リスクが低い方法に限定しつつ、書類の郵送等による従来の確認方法も残すこととなっています。
参考資料:https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/download?seqNo=0000294589
カード代替電磁的記録を用いた本人確認方法の新設(令和7年6月24日施行)
番号利用法の改正により、個人番号カードと同等の機能を持つ「カード代替電磁的記録」を用いた本人確認方法が新たに規定されました。
この方法は、スマートフォンに搭載可能な機能として、本人特定事項(氏名・住所・生年月日・顔写真など)を電子的に管理・送信し、特定事業者等がこれを受信・確認することにより本人確認を行うものです。
◆主なポイント
- カード代替電磁的記録の構成要素(電子証明書等)を用い、本人特定事項の送信が可能
- スマートフォン等で情報を送信し、特定事業者は専用の確認プログラムにより顧客本人であることを検証
- 情報の送受信には、送信用・確認用プログラムの使用が必要
◆改正の背景と目的
この改正は、行政手続のデジタル化推進に伴い、従来のマイナンバーカードに加えてスマートフォンを用いた本人確認の選択肢を提供し、利便性向上と手続の効率化を目指すものです。
特に、スマートフォンによるマイナンバーカード機能の搭載開始により、本人確認の手段がさらに拡充されます。
参考資料:https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/download?seqNo=0000294579
関連ニュース:https://services.digital.go.jp/mynumbercard-iphone/news/10c42297159b33349de8e/
改正法施行への対応
2027年4月に改正犯収法施行規則が施行されることに伴い、本人確認の実務にも影響が及ぶ見込みです。
とくに非対面取引においては、これまで利用されていた方法が使えなくなるケースがあるため、運用の見直しを検討する場面が増えると考えられます。
ICチップ読取やJPKIといった新たな方式への切り替えが想定される中で、システム面や業務フローにどのような調整が必要になるか、整理を進めておくことが重要です。
加えて、スマートフォンによる本人確認の普及や、「カード代替電磁的記録」の導入も含めた技術的な進展にも注目が集まります。
利用者の利便性とセキュリティの両立を図りつつ、今後の制度運用の方向性を見極めながら、自社の状況に応じた対応を検討していくことが望ましいでしょう。