建設業法改正が迫る!「労務費の基準」が実務に与える影響とは
投稿日:2025年9月5日
2025年12月に全面施行される改正建設業法では、建設工事の請負契約において「労務費の基準(標準労務費)」が新たに導入されます。
国土交通省では、全国で説明会を開き、技能者の処遇改善と建設業の持続可能性を確保するために、発注者・建設業者双方に対して新しい商習慣の定着を呼びかけています。
標準見積書の普及によって、労務費や法定福利費、安全衛生経費が内訳として明示されることで、建設費のコスト構造はより透明化されます。
一方で、制度の実効性をいかに確保するかは大きな課題であり、契約実務やCCUS(建設キャリアアップシステム)との連動が注目されています。
標準労務費の仕組みと算定方法
標準労務費は、中央建設業審議会が作成・勧告するもので、公共工事設計労務単価に直轄工事の歩掛かりを乗じて算出することが基本とされています。これにより、著しく低い見積もりや契約締結が禁止され、技能者の賃金を削る形での価格競争を防止することが可能となります。
この仕組みは、単なる価格規制ではなく、技能者が適正に評価され、将来にわたって建設業に人材を確保するための基盤となるものです。制度設計の背景には、建設業の高齢化や担い手不足が深刻化している現状があり、処遇改善は業界全体の持続可能性を確保する上で不可欠とされています。
標準見積書の普及とコスト構造の透明化
国土交通省は併せて、労務費に加えて法定福利費や安全衛生経費といった「雇用に必要な経費」を明示できる標準見積書を普及させていく方針です。これにより、材料費と労務費が分離され、経費の内訳が発注者にも明確に示されることになります。
従来は、工事費の内訳が不透明であったため、発注者から見れば「なぜコストがかかるのか」が理解されにくい状況にありました。標準見積書の活用は、建設費の透明化を進め、適正な価格での契約締結を後押しする重要な制度といえます。
実効性確保の課題と国交省の対応
もっとも、標準労務費を基準として示しただけでは、技能者の処遇改善につながるとは限りません。
国交省も「基準を作れば直ちに改善するものではない」と指摘し、制度の実効性確保策を同時に進めています。
具体的には、
- 契約当事者による「コミットメント」の活用
- 適正に賃金を支払う建設業者を見える化する「自主宣言制度」
などが検討されています。
これにより、発注者と建設業者の双方が責任を共有し、制度の定着を図る狙いがあります。
説明会では、発注者から「予定価格の積算に公共工事設計労務単価以外の単価を使用することが適法か」との質問も寄せられました。国交省は「直ちに違法とする条文はない」としつつ、公共工事設計労務単価を基にした見積もりを切り下げる行為は違法となり得ると指摘しており、実務上の注意点が浮き彫りとなりました。
建設キャリアアップシステム(CCUS)との連動
制度の実効性を高めるためには、労務費が確実に技能者の賃金に反映される仕組みが不可欠です。
そのカギを握るのが、2019年から運用が始まった「建設キャリアアップシステム(CCUS)」です。
CCUSには既に168万人(技能者全体の56%)が登録しており、就労履歴や資格情報がデータベース化されています。さらに能力評価に基づいたレベル別年収試算も公表されており、今後は実際に支払われた賃金データをCCUSに登録して比較できる仕組みが導入されれば、制度の実効性を担保する大きな力となります。
発注者・受注者に求められる意識改革
制度改正の本質は、単に「ルールを守る」ことにとどまりません。技能者に対して適正な処遇を保障し、建設業の持続可能性を高めるためには、発注者と受注者双方の意識改革が求められます。
発注者には、建設業者をパートナーと捉え、適正な労務費を支払う姿勢が必要です。建設業者には、技能者の賃金の原資である労務費を競争の対象にしない覚悟が求められます。これらの新しい商習慣が根付いてこそ、制度は真に機能するといえるでしょう。
まとめ
改正建設業法による標準労務費制度の導入は、技能者の処遇改善と建設業の持続可能性を確保するための大きな転換点です。標準見積書の普及やCCUSとの連動により、コスト構造の透明化と制度の実効性が確保されていくことが期待されています。
一方で、実務運用には多くの課題が残されており、発注者・受注者双方の意識改革と、新しい商習慣の定着が不可欠です。行政書士としても、許可や契約実務を通じて制度の円滑な運用を支援し、建設業界の健全な発展に貢献していくことが求められます。
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