トピックス

「2026事務年度 金融行政方針」徹底解説

はじめに

2026年9月15日、金融庁より「2026事務年度金融行政方針」が公表されました。

金融庁では、7月~翌6月までを事務年度として区切り、毎年、事務年度ごとの金融行政の重点課題・基本方針を「金融行政方針」として策定・公表しています。

2026事務年度では、2026年7月に国が策定した「成長投資を促進するための金融戦略-資産運用立国のアップグレード-」(以下「金融戦略」)に基づき、本戦略で定めた施策を着実に具体化・実行する為の取組みが規定されています。

本トピックスでは、2026事務年度金融行政方針のポイントと金商業者の方々が意識すべき事項を解説します。

2026事務年度 金融行政方針のポイント

2026事務年度 金融行政方針(以下「本方針」)は、国が定める金融戦略を実効化し、持続的な経済成長と金融システムの安定を両立させることを主眼に、以下[1]~[3]のテーマに様々な施策等が規定されています。

なお、金融庁では、本方針に先立ち、2026年8月に組織再編を実施しています。

従来の監督局が、「資産運用・保険監督局」と「銀行・証券監督局」の二局体制となり、今後は、新たな「監督総括審議官」やその傘下の「横断モニタリング担当課室」のもと、専門的、横断的かつ深度あるモニタリングが継続され、監督・検査の実効性を高めていく方針としています。

二局監督体制後の初の事務年度方針、という点でも、本方針は注目です。


[1]金融機能の更なる発揮を促し、持続的な成長に貢献する

金融戦略に掲げられた施策の着実な具体化・実行に向け、以下の取組が規定されています。

①成長投資の促進・地域金融力の強化
株式・社債市場の機能発揮施策やインパクト投資等を通じ、成長投資の促進を図る。また、地域課題解決に取組む事業への資金供給促進、企業価値担保権制度の活用等により、地域金融力を強化。

②安定的な家計資産形成の促進
資産運用サービス提供金融機関へのモニタリング強化、企業型DC・iDeCo拡充等により、良質な金融商品・サービスを提供。また、金融リテラシー・金融経済教育の浸透推進等により、必要な知識と情報を得られる環境を整備。

③デジタル金融等の高度化
オンチェーン金融の社会実装、金融機関等におけるAIの健全な利活用等により、デジタル金融・金融インフラの高度化を推進。

特に、本項目において、「資産運用サービス提供金融機関」に対して、運用力向上や適切なプロダクトガバナンスの確立に向けた取組を横断的にモニタリングし、プログレスレポートとして公表する旨、規定されています。

[2]金融システムの安定や市場の公正性・透明性を確保する

金融行政当局の責務を全うすべく、金融庁の組織再編を行った上で、金融機関に対するリスクモニタリングの高度化、実効性ある監督・検査の実施等が規定されています。

①リスクモニタリングの高度化
ミクロ・マクロ視点を連携し、各金融機関リスクや金融システム全体のリスクをモニタリング。金利変動時の流動性・金利リスクや、不動産等の信用・集中リスクを重点的にモニタリングする他、様々な角度からリスク把握・分析・モニタリングの高度化を図る。

②ガバナンス確保とリスク管理強化
金融機関の不正事案に対する真因分析、再発防止等の実効的な機能の継続的確認、内部監査機能の高度化(自律的な検証・牽制機能の発揮)、サイバーセキュリティ対策やサードパーティリスク管理の強化等を推進。

③金融犯罪等への対応、市場の公正性等の確保
官民連携による特殊詐欺等防止取組強化、FATF第5次審査を見据えたAML/CFT対策の促進、利用者保護での金融サービス提供実態のモニタリング。また、潜脱的取引やSNSによる無登録営業、暗号資産不公正取引の他新類型の違反行為に対する厳正な調査・検査を実施。

特に、業態別の重点方針として、例えば、「資産運用会社」に対しては、適切な業務運営体制や受託者責任を適切に果たすためのガバナンス確保に向けた取組を確認すること、「生命保険・損害保険会社」に対しては、不祥事案に対する立入検査等の厳格な行政対応、改正保険業法への対応状況を確認すること等が明記されています。

「暗号資産交換業者等」に対しては、暗号資産取引規制が資金決済法から金商法へ移管される改正に向け、モニタリングや無登録業者対応の他、改正金商法施行に向けた監督指針等の整備や自主規制機関の機能強化方針が明記されています。

[3]国民への貢献のために常に進化し続ける組織をつくる

金融を取り巻く環境や行政課題が急速に変化する中、日本の金融機能発揮の更なる向上を図る為、金融庁自身の変革の取組みが規定されています。

①AIを活用した業務改革(AX)
金融庁長官(チーフAIオフィサー)のもと「金融庁AIトランスフォーメーション会議」を設置。AI・デジタル技術の利活用を通じ、業務プロセス改善、金融行政の改革(AX)を推進する他、必要な人材育成・資源配分の最適化を推進。

②金融行政の質の向上・組織強化
高度な専門性を備えた検査官・モニタリング人材育成を推進。マネジメント研修等によるリーダーシップ及び組織運営能力向上、柔軟な働き方の推進、スローガン浸透による組織目標の共通理解化等、不断に進化し続ける組織改革を実施。

金商業者が意識すべきポイント

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①内部管理の「実効性」
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金融庁は、「形式的な態勢整備」にとどまらず、問題の早期把握と改善につながっているか等、その「実態」「実効性」を重視しています。

「規程や社内体制がある」だけでは不十分です。

規程等に従った実践はもちろん、業務実態や事業戦略に応じたリスクを早期把握・改善できているかを含め、実効性を重視した内部管理を徹底しましょう。

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②経営・業務改善につなげる内部監査
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内部監査も、「内部監査規程がある」「一応内部監査を実施している」だけでは不十分です。

各社の業務特性やリスク変化を捉え、実効性のある内部監査を実施し、指摘に対する改善状況・再発防止、それらの実効的・継続的な実施まで行うことが重要です。

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③不祥事・問題に対する対応
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不祥事等について、担当者個人の問題にとどめず、経営陣の姿勢、組織文化、内部牽制等を含めて、問題が発生・見逃した真因を分析し、有効な再発防止策の実施・定着までを継続的に確認することが重要です。

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④制度・市場の変化を見据えた早期対応
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株式・社債市場の機能強化、暗号資産を金商法の規制対象とする法改正等、今後も金商業者に影響する法改正や方針等が示されており、自主規制・業界実務動向含め、継続的に把握し、自社に必要な規制対応や業務改善を早期に行うことが重要です。

サポート行政書士法人の担当者コメント

金融庁が重視するのは、規程や体制等の「形」だけでなく、それらが実務で有効に機能し、リスクの早期把握・改善が可能な自律的経営につながっているかという「実態」「実効性」です。

社内だけで確認していると、属人化・慣行化した運用や部門間の認識のずれを見落としたり、自覚なく法令諸規則や業界慣習とは異なる対応が見逃されてしまったりします。

独立した第三者・外部専門家の目線を上手に活用することで、社内だけでは気づきにくい課題を客観的に洗い出し、限られた人員・知見を補いながら、改善の優先順位や具体策を整理できます。

サポート行政書士法人では、金商業者の業務内容や組織体制を踏まえ、内部管理態勢・社内規程の整備や見直し、コンプライアンス実務の支援、内部監査の実施から改善対応までを伴走支援しています。長年の金商業者実務支援を通じて得た知見・経験を活かし、単なる点検・指摘に終わらせず、実務に即した態勢整備と継続的改善までを支援しています。

「規程はあるが、運用が適切か確認したい」「内部監査を実施しているが、形骸化していないか不安」「業務の実態や不正を予防したい」等、内部管理態勢や内部監査に課題をお持ちの金商業者の方は、ぜひご相談ください。

(著者:増野)