認知の階段──なぜ人は話が噛み合わないのか
投稿日:2025年12月17日
組織と個人の成長を分ける“視座”のメカニズム

仕事上の指示や指導、戦略プロジェクトの会議、あるいは顧客とのやりとりなどで、
「なんで話が通じないんだろう?」「意味がわからない…」
と感じること、皆さんもあると思います。
実は先日、脳科学を研究している友人と話していて、
まさにその正体と言える「認知の階段」の話が出ました。
今日は、これをわかりやすく共有します。
…と、ここまで書いたところで正直に述べますが、このブログは長いです(笑)。
でも最後まで読んでもらえたら、きっと役に立つと思います!
あなたの人生や仕事に役立つ可能性が少しでもあると思ったら、
「このブログを読む数分」は決して高い買い物ではないはずです。
友人から聞いた「認知の階段」の話
友人いわく、人にはそれぞれ 認知の階段(Tier:ティア) があり、
ティア1からティア5まで段階的に分かれているそうです。
イメージとしては、下の階段から上の階段へと「視野が広がっていく」ようなものです。
●ティア1:感情の階段
世界を「好き嫌い」「安心/不安」で捉える段階。
例:「これ不安だな」「なんか嫌な感じがする」
●ティア2:具体・手順の階段
「明日何をすればいい?」「手順は?」とタスク基準で考える段階。
●ティア3:理由・ロジックの階段
「なぜ?」「理由は?」と因果関係や論理で理解する段階。
●ティア4:俯瞰の階段
全体像を捉え、他者視点や構造、抽象化ができる段階。
例:「本質は何か」「相手の立場ではどう見えるか」
●ティア5:未来の階段
未来を見据え、長期的な構造変化まで含めて考えられる段階。
例:「これからどうなるか」「今の判断は未来にどう影響するか」
友人はこうも言っていました
・これはIQとはあまり関係がない
・経験、価値観の幅、多様な環境が「上に上がりやすくする」
・上にいる人ほど下の階段を理解できるが、その逆は難しい
この一言で、僕は色々と腑に落ちました。
なぜ話が噛み合わないのか
この階段の差によって、二段以上離れると会話が噛み合わなくなるんです。
これが「認知の壁」。
例として、こんなシーンを想像してみてください。
入社5年目のティア3(理由・ロジック)先輩が、
「行政担当者が〇〇と言っているのは、△△規制があるからだよ」と説明したとします。
先輩は「→だから△△規制に合わせて再提出してね」
と「言わずとも伝わる」と思っていた。
しかし…
ティア2(具体・手順)の後輩:「で、私は何をすればいいんですか?」
ティア1(感情)の後輩:「なんか責められてる気がする…嫌だな」
こうなってしまう。
これは能力の問題ではなく、立っている階段が違うだけなんです。
戦略プロジェクト
実は、この認知の階段差が最も露骨に出るのが、社内の戦略プロジェクトです。
これは、マーケティングやブランディング、ナレッジ等、重要分野を戦略的に進める全社のプロジェクトです。
戦略プロジェクトでも、この認知の階段の差が顕著に表れています。
戦略というのは基本的にティア4(俯瞰)やティア5(未来)の領域。
だからティア1(感情)・ティア2(具体・手順)の階段にいる人からすると、
「何を言ってるのかよくわからない」
「つまり明日どうすれば?」
「これって私が怒られてるの?」
「何を考えればいいかわからない…」
と感じやすい。
一方でティア3(理由・ロジック)の人は、
「言われたことの理由はわかるけど、そこから“戦略として組み立てる”のは難しい…
となりやすい。
そして、ティア4(俯瞰)やティア5(未来)で話す人との間で、
噛み合わない瞬間がどうしても発生するのです。
戦略プロジェクトの今後
必ずこうしないといけないわけではありませんが、
僕個人としては、次の3つをやると効果が出やすいと感じています。
① 各チームにティア4(俯瞰)・ティア5(未来)の視点を持つ人を入れる
戦略は高い階段からでないと進まないため、必ず「俯瞰できる人」が1名必要。
進めるメンバーに 「階段の高い人」がいないと議論が止まります。
研究によると、多くの人たちはティア2(具体・手順)~ティア3(理由・ロジック)に属るするので、
ティア4(俯瞰)~ティア5(未来)は希少な存在として上手に配分する必要があります。
② AIを活用し、視点の階段を補助してもらう
会社の状況や戦略案をAIに入力し、「構造」「未来」「本質」を一緒に考えてもらう。
これは、ティア4(俯瞰)・ティア5(未来)の思考を「チーム全体に共有する装置」になります。
③ ティア1(感情)・ティア2(具体・手順)の人には「感情」や「ストーリー」で伝える
神話・宗教・イデオロギーなどが物語形式なのは、人類のどの「認知の階段」にも届くからです。
戦略も同じ。抽象から入ると伝わらないが、感情と物語なら全員に届きます。
最後
「学校やプライベートではこんなに話がかみ合わないなんてなかった」と感じる人がいるかもしれません。
それは、プライベートでは自然と自分と同じくらいの階段の人とだけ繋がっているからです。
しかし仕事では、階段の違う人たちと毎日関わります。
ホワイトカラーの仕事では抽象度が高いので、階段差がより顕著に現れます。
だから、少し上の階段の人を「すごい」と感じるのも自然だし、
階段が離れすぎると理解できず評価もできないのも自然です。
これは能力の問題ではなく、人間の認知構造そのもの。
このブログが、皆さんがより楽に、
よりスムーズにコミュニケーションできるほんの少しのヒントになれば嬉しいです。

