医療機器の添付文書、何をどの順番で書く?記載要領(細則)のポイントを解説
投稿日:2026年10月26日

医療機器の添付文書は、記載項目の順序や様式、改訂時の表示方法、承認内容との書き分けなどが通知で細かく定められています。厚生労働省の「医療機器の添付文書の記載要領(細則)について」をもとに、製造販売業者が実務で確認したいポイントとよくある誤りを解説します。
添付文書には細かいルールが定められている
「添付文書は、承認書の内容を写して、注意事項を足せば足りるのではないか」と考えていませんか。
実は、医療機器の添付文書には、どの項目を、どの順番で、どの位置に、どう書くかについて、厚生労働省が細かいルールを示しています。項目の順序だけでなく、改訂した箇所の示し方、販売名の文字の大きさ、承認内容と自社の注意事項の書き分け方まで決められています。
今回は、厚生労働省の通知「医療機器の添付文書の記載要領(細則)について」(平成26年10月2日付け薬食安発1002第1号、令和4年7月21日最終改正)をもとに、添付文書の作成・改訂のときに押さえておきたいポイントを整理します。
添付文書は「決められた型」で書く
簡単にいうと、この通知の内容は次の3点です。
- 記載項目は17項目あり、決められた順序で記載する
- 用紙サイズ、文字の大きさ、改訂年月の表示など、様式面のルールがある
- 「使用目的又は効果」「使用方法等」などは、承認・認証・届出の内容を正確に書き、自社で加える注意事項とは区別して書く
添付文書は、医療現場の方が製品を安全に使うための基本的な情報源です。製品ごとに書き方がばらばらだと、医療従事者が必要な情報を探しにくくなり、誤った使い方につながるおそれがあります。記載の型を統一するために、このような細則が設けられています。
「医療機器の添付文書の記載要領(細則)」とは
この通知は、厚生労働省医薬食品局安全対策課長から都道府県の衛生主管部(局)長あてに出されたものです。局長通知「医療機器の添付文書の記載要領の改正について」(平成26年10月2日付け薬食発1002第8号)を受けて、具体的な書き方を細則として定めています。
主なポイントは次のとおりです。
- 平成26年11月25日から適用されています
- それまでの「医療機器の添付文書の記載要領について」(平成17年3月10日付け薬食安発第0310001号)は廃止されました
- 「警告」「禁忌・禁止」「使用上の注意」の書き方は、別の通知「医療機器の使用上の注意の記載要領について」(薬食安発1002第5号)に従います
つまり、添付文書を作るときは、この細則だけでなく、局長通知と「使用上の注意の記載要領」通知もあわせて確認する必要があります。
対象となる事業者
添付文書を作成・改訂する立場にある事業者、一般には医療機器の製造販売業者が主な対象です。実務では、添付文書の原案を作る製造業者、海外製品を輸入する事業者、薬事担当者の方にも関係します。
記載項目は17項目、順序が決まっている
細則では、添付文書に記載する項目と順序が次のように示されています。
| No. | 項目名 | 主な記載ルール |
| 1 | 作成又は改訂年月 | 左上隅に記載。版数も表示 |
| 2 | 承認番号等 | 承認番号・認証番号・届出番号のいずれかを、原則として販売名の右側に記載 |
| 3 | 類別及び一般的名称等 | 販売名の上(中央部)に記載。JMDNコード、クラス(高度管理・管理・一般)、特定保守管理医療機器などの別も記載 |
| 4 | 販売名 | 中央部の見やすいところに、一般的名称より大きい文字で記載 |
| 5 | 警告 | 本文の冒頭に記載 |
| 6 | 禁忌・禁止 | 警告に続けて記載(警告がない場合は本文の冒頭) |
| 7 | 形状・構造及び原理等 | 図示、体に接触する部分の組成、仕様など |
| 8 | 使用目的又は効果 | 承認・認証を受けた内容を記載 |
| 9 | 使用方法等 | 承認・認証を受けた内容を記載。写真やイラストで手順を図示 |
| 10 | 使用上の注意 | 「使用上の注意の記載要領」通知に従う |
| 11 | 臨床成績 | 承認時の臨床試験成績などがある場合に記載 |
| 12 | 保管方法及び有効期間等 | 保管方法・有効期間・耐用期間(又は使用期間)を小項目に分けて記載 |
| 13 | 取扱い上の注意 | 承認書などで定められた注意事項を記載 |
| 14 | 保守・点検に係る事項 | 使用者による保守点検と業者による保守点検に分けて記載 |
| 15 | 承認条件 | 承認条件がある場合に記載 |
| 16 | 主要文献及び文献請求先 | 記載の裏付けとなる主要なデータを記載 |
| 17 | 製造販売業者及び製造業者の氏名又は名称等 | 緊急時に連絡がつく電話番号などを記載 |
記載すべき適切な情報がない項目は、項目名ごと省略しても差し支えないとされています。ただし細則では、できる限り全項目について記載することが望ましいともされています。
様式面のルール
①用紙・文字の大きさ
医家向け医療機器は、医療関係者の利便性を考えて、原則としてA4判(左側に1.7cmの綴じ代を確保)とされています。文字は原則として8ポイント程度とし、項目名はゴシック体にする、文字を大きくするなどして見やすくするよう求められています。段落に分ける場合は、必ず段落番号を付けます。
なお、A4判の例外として、細則では次の2つのケースが示されています。
- 包装が小さくA4判での添付が製品の特性上できない、又は著しく難しい一般医療機器で、すべての情報を容器に記載し、求めに応じてA4判を提供できる場合
- 1日の使用量が多い管理医療機器で、すべての情報を容器に記載し、事前にA4判を医療機関に配布し、求めに応じて提供できる場合
例外にあたるかどうかは条件を満たすかで決まります。「自社製品も小さいから」という理由だけで判断しないよう注意が必要です。
②改訂年月と改訂箇所の表示
改訂のときは、次の点に注意してください。
- 作成又は改訂の年月と版数を左上隅に記載します
- 改訂したときは、前回と今回の改訂年月を並べて表示し、前々回の改訂年月は削除します
- 改訂箇所は、たとえば項目の前に「*」印を付け、改訂部分に下線を引くなどして、どこが変わったか分かるようにします。対応する改訂年月・版数にも同じ印を付けます
- この表示は、次々回の改訂まで続けて表示します
③取扱説明書がある場合
添付文書とは別に取扱説明書を作っている製品は、添付文書の1ページ目の目立つところに、「取扱説明書等を必ず参照する」旨を記載します。
各項目で特に確認したいポイント
①単回使用医療機器の「再使用禁止」
単回使用医療機器は、作成又は改訂年月の下に「再使用禁止」と記載し、さらに「禁忌・禁止」の項にも記載します。2か所に記載が必要な点に注意してください。
②同じ承認で複数の製品がある場合
1つの承認で複数の製品がある場合は、販売名の後に添え字を付けて区別します。
例:「○○骨接合インプラント(A)」「○○骨接合インプラント(B)」、「××気管切開チューブ(カフ付き)」「××気管切開チューブ(カフなし)」
③承認の種類による表示
承認の種類によっては、次のような表示が必要です。
- 条件付き承認品目:「条件付き承認品目」、一部だけ該当する場合は「(一部)条件付き承認品目」と記載
- 革新的医療機器条件付早期承認品目:販売名の右又は下側にその旨を記載
- 緊急承認医療機器:販売名の上又は左側に「注意-緊急承認医療機器」と記載し、赤枠で囲う
- 特例承認医療機器:販売名の上又は左側に「注意-特例承認医療機器」と記載し、赤枠で囲う
④形状・構造及び原理等
- 本文中で触れている部位は、イラストなどに矢印を付けて示します
- 体に直接触れる医療機器や体内に埋め込む医療機器は、体に接触する部分の組成(例:ニッケル・クロム、塩化ビニル等)も記載します
- サイズのバリエーション、動作環境、バッテリーの駆動時間などの仕様も記載します。駆動時間などは、新品時の値であることが分かるように書きます
- 他の医療機器と比較する記載ができるのは、十分に客観的な比較データがあり、比較対象が原則として広く使われている医療機器である場合に限られます。その場合、比較対象の販売名と製造販売業者名も記載します
⑤使用目的又は効果・使用方法等
ここは特に重要です。どちらの項目も、承認又は認証を受けた内容を記載します。届出品の場合は、使用目的又は効果はクラス分類告示の一般的名称の定義の範囲内で、使用方法は医学薬学上認められた範囲内で記載します。
自社として加えたい注意事項は、「使用目的又は効果に関連する使用上の注意」「使用方法等に関連する使用上の注意」として、承認・認証・届出の内容と明確に区別して記載します。
⑥臨床成績と主要文献
臨床成績は、承認時に使った臨床試験の成績、又はこれに代わるものとして評価された資料がある場合に記載します。使用状態、期間、症例数、有効率などを、承認された使用方法に沿って記載します。
承認された適用範囲を超える「使用目的又は効果」を示唆する成績や文献は、記載しません。
⑦保管方法及び有効期間等
「保管方法」「有効期間」「耐用期間」(又は製品に応じて「使用期間」)の小項目に分けて記載します。
- 有効期間:承認書の記載どおりとします
- 耐用期間:使用開始から使える期間(年数)又は使用の最終期限(年月)を記載し、有効期間とは区別します。自己認証による場合は「[自己認証(弊社データ)による]」と記載します
- 使用期間:単回使用医療機器の、使用できる標準的な期間(推奨される連続使用時間)を記載します
⑧保守・点検に係る事項
特定保守管理医療機器や繰り返し使用する医療機器では、「使用者による保守点検事項」「業者による保守点検事項」の順に小項目を分け、**点検項目と点検頻度(時期)**を記載します。具体的な点検方法は取扱説明書に記載し、添付文書では「取扱説明書参照」としても差し支えないとされています。
⑨製造販売業者等の連絡先
製造販売業者の電話番号は、緊急連絡先として随時連絡が通じる番号を記載します。製造業者が主たる設計を行っている場合はその製造業者名を、外国製造業者の場合は名称・国名・英名を記載します。販売業者(代理店)の連絡先を書き込める空欄を設けることが望ましいとされています。
生物由来製品の場合の追加ルール
生物由来製品・特定生物由来製品には、次のような追加のルールがあります。
- 販売名の前に「生物由来製品」又は「特定生物由来製品」と記載します。遺伝子組換え材料を使っている場合は、販売名の下にその旨を記載します
- 特定生物由来製品は、「警告」の前に、感染症伝播のリスクに関する注意を枠で囲んで記載します(細則の別記1に記載例があります)
- 「形状・構造及び原理等」に、ヒトその他の生物に由来する成分の名称、由来する生物、使用部位などを記載します。ヒト血液の場合は、採血国と採血方法(献血か非献血か)も記載します(別記2に記載例があります)
- 特定生物由来製品は、「重要な基本的注意」に、使用する患者さんに必要事項を説明し理解を得るよう努める旨を記載します
- 「取扱い上の注意」に、販売名、ロット番号、使用年月日、患者の氏名・住所などを記録し、医療機関等で少なくとも20年間保存する必要がある旨を記載します
よくある誤解・注意したいポイント
誤解1:「使用上の注意として書けば、承認内容と混ざっても問題ない」
使用目的や使用方法に関する自社の注意事項は、承認・認証・届出の内容と明確に区別して書く必要があります。承認内容に追記したように見える書き方は避けてください。
誤解2:「良い臨床データがあれば、何でも載せてよい」
承認の範囲を超える使用目的や効果を示唆する成績や文献は、記載しないこととされています。営業的に魅力のあるデータでも、添付文書に載せてよいかは慎重に確認が必要です。
誤解3:「改訂したら最新の年月だけ書けばよい」
改訂のときは前回と今回の改訂年月を並べ、改訂箇所に印を付けるなど、変更点が分かる表示が求められます。
誤解4:「再使用禁止は1か所に書けばよい」
単回使用医療機器では、左上の改訂年月の下と「禁忌・禁止」の項の両方に記載します。
誤解5:「耐用期間と有効期間は同じもの」
細則では、耐用期間は有効期間と区別して記載することとされています。
表現面の注意
細則では、「無理に」「強く」「しっかり」「過度な」といったあいまいな表現はできるだけ避けることとされています。略語を使う場合は、最初に出てくる箇所で正式名称と略称を並べて書きます。
実務上確認しておきたいポイント
添付文書を作成・改訂する際は、次の点を確認しておくと安心です。
- 承認書・認証書・届出書の記載と、添付文書の「類別及び一般的名称等」「使用目的又は効果」「使用方法等」が一致しているか
- 17項目の順序、項目名、配置(左上・中央部・右側など)が細則に沿っているか
- 単回使用、条件付き承認、緊急承認、生物由来製品など、製品特有の表示が漏れていないか
- 改訂年月・版数・改訂箇所の表示が正しいか
- 自社で加えた注意事項と承認内容が区別されているか
- 臨床成績・文献が承認の範囲内に収まっているか
- 緊急連絡先の電話番号が、実際に随時連絡がつく番号になっているか
- 「使用上の注意の記載要領」通知など、関連する通知もあわせて確認しているか
資料作成時点に関する注意
この細則の最終改正は令和4年7月21日です。その後の制度改正や関連通知の発出によって取扱いが変わっている可能性があります。
令和3年8月からは、添付文書の情報(注意事項等情報)を電子的な方法で提供する制度が始まっていますが、この細則には電子的な提供に関する記載はありません。電子化に伴う対応は、別途、法令や関連通知の確認が必要です。
また、プログラム医療機器など製品の特性によっては、この細則だけでは判断できない場合があります。個別の製品ごとに確認してください。
まとめ
今回のポイントは次のとおりです。
- 添付文書は17項目を決められた順序で記載し、A4判・8ポイント程度などの様式ルールに沿って作成する
- 「使用目的又は効果」「使用方法等」は承認・認証・届出の内容を正確に記載し、自社の注意事項は区別して書く
- 単回使用医療機器、条件付き承認、緊急承認・特例承認、生物由来製品などは、製品特有の表示が漏れていないか確認する
- 改訂のときは、改訂年月・版数・改訂箇所が分かる表示になっているかを確認する
- 細則は令和4年時点の内容のため、電子化への対応や最新の関連通知もあわせて確認する
添付文書の作成は弊社がサポートします
医療機器の添付文書は、項目の順序や様式が決まっているため、一見すると型に当てはめるだけの作業に思えるかもしれません。
ただ実際には、承認書の内容をどこまでそのまま書くべきか、自社の注意事項をどう区別して書くか、臨床データや文献が承認の範囲内に収まっているか、製品特有の表示が必要かなど、製品ごとの個別判断が必要になる場面が少なくありません。また、「使用上の注意の記載要領」や電子的な情報提供に関する通知など、関連するルールもあわせて確認する必要があります。
弊社では、医療機器の製造販売業者さま向けに、次のような支援を行っています。
- 承認書・認証書・届出書の内容と添付文書の記載の整合性チェック
- 新製品の添付文書(案)の作成支援、既存の添付文書の改訂内容の確認
- 改訂年月・版数・改訂箇所の表示など、様式面の確認
- 添付文書の作成・改訂に関する社内手順や記録の整備
「自社の添付文書が細則に沿っているか一度確認したい」「改訂の進め方に迷っている」という場合は、弊社までご相談ください。製品や承認内容を確認したうえで、必要な対応を整理します。
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記事ソース: 医療機器の添付文書の記載要領(細則)について(厚生労働省)


