化学品輸出における特定原産地証明書と僅少ルール
投稿日:2025年6月10日
EPAを活用した化学品輸出と原産地証明
経済連携協定(EPA)に基づき、化学品を含む多くの製品で関税優遇を得るための「特定原産地証明書」が求められています。
化学品は輸入原料が多様かつ複雑であるため、完全に原産材料で構成されないことも多く、「僅少ルール(de minimis)」の活用が実務上のポイントになることも多いです。
僅少ルール(De Minimis)とは?
僅少ルールとは、原産地基準を満たさない一部の非原産材料について、一定の範囲内で使用が認められるという特例です。
RCEP協定では、原則、HSコード第1類~第97類の品目でFOB価格の10%以下の非原産の材料であれば、原産と認められるケースがあります。
化学品における実務上のポイント
化学品はSP(Specific Process Rule)ルール対象が多い
化学品分野では、単純なHSコード変更(CTCルール)だけでなく、「特定の化学的工程が行われているか」が原産性の判断基準となることが多く、これをSPルール(Specific Process Rule)と呼びます。
SPルールは各EPA(例:RCEP、日EU、日豪、CPTPP)においてHS第28類~38類(無機・有機化学品、医薬品、化学工業製品)を中心に広く適用されています。
化学品の多くは、輸入材料を使用して日本国内で加工されるため、単純なHSコード変更(CTHなど)では原産性を証明できないケースが多いです。
しかし、日本国内で化学反応や精製などの「実質的加工」が行われていることを証明できれば、SPルールにより「日本産」として認定可能になります。
注意点としては、原産地判定において、SPルールの該当工程を製造記録、工程図、SDS、QC報告書などで裏付ける必要があります。
僅少ルールが使えるケース
例)有機溶剤A+添加剤Bを日本国内で合成し、製品Cとして輸出
添加剤Bが韓国産で、HSコードの変更が発生せず、本来は原産性が認められないところ
添加剤Bの価格がFOBの7% → 僅少ルール適用で「日本産」として証明可能
※あくまで「最終製品が原産地規則を一部満たさない場合」で、かつ僅少成分が10%未満である必要があります。
まとめ
特定原産地証明書の取得には、化学品特有のルール(SPルール)に加え、僅少ルールの活用がポイントになります。
特に原料が多国籍で構成される場合でも、10%以内であれば原産地判断に柔軟性を持たせることが可能です。
電子化など新制度への対応も含めて、制度理解+社内体制整備を進めておくことが国際競争力につながります。
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著者:石倉