【専門家が解説】サウナブームの裏に潜む「許認可逃れ」のリスクと消防法の盲点
投稿日:2025年12月24日

空前のサウナブームが続く中、全国各地で趣向を凝らしたサウナ施設が誕生しています。
しかし、その華やかな盛り上がりの裏側で、いま「公衆浴場法の抜け道」を利用した運営形態が問題視されています。
先日報じられたニュースでは、旅館業法の「付帯施設」という名目や、閉鎖的な「会員制」を自称することで、公衆浴場法の厳しい基準を回避して営業するケースが指摘されました。
今回は、許認可の専門家の視点から、この「許認可のグレーゾーン」に潜むリスクと、見落とされがちな消防法の重要性について解説します。
1. 公衆浴場法の「抜け道」とされる運営実態とは
通常、不特定多数の人にサウナ(蒸気浴・熱気浴)を提供する場合、公衆浴場法に基づく「普通公衆浴場」または「その他の公衆浴場」としての許可が必要です。
この許可を得るには、換気設備、排水、消毒設備、さらには男女別管理など、極めて厳格な衛生・構造基準をクリアしなければなりません。
問題となっているのは、以下のようなケースです。
- 「旅館の付帯施設」の悪用:
宿泊客のための設備として許可を得ながら、実際には外来利用(日帰り入浴)をメインとし、実態は公衆浴場そのものであるケース。 - 「会員制・プライベート」の標榜:
不特定多数ではなく「特定の会員」のみの利用と主張し、公衆浴場法の適用外を狙うケース。しかし、実態として誰でも会員になれるような運用であれば、行政判断では許可が必要とみなされます。
これらの「基準逃れ」は、単なる手続きの問題ではありません。
適切な衛生管理が行われないことによるレジオネラ菌の発生や、風紀の乱れといった、利用者の安全を脅かす重大なリスクをはらんでいます。
2. 消防法が突きつける「運営の壁」
さらに、公衆浴場法と並んで高いハードルとなるのが「消防法」です。
今回の事故は、適切な消防設備が設置されていた可能性が高いですが、サウナ施設は、消防法上の「火災発生リスクが高い施設」に分類されます。
特に以下の点は、保健所の許可とは別に、消防署による厳しいチェックが入ります。
- 用途の判定:
建物の用途が「公衆浴場(6項ロ)」や「遊技場・飲食店等(2項・3項)」に該当する場合、一般的な事務所や住宅よりも厳しい消防用設備(自動火災報知設備、スプリンクラー、誘導灯など)の設置が義務付けられます。 - 内装制限と火気使用:
サウナストーブの周囲の離隔距離や、壁面の不燃化など、火災予防条例に基づく厳格な基準があります。
「保健所の許可が不要な形態だから」と安易に考えて内装工事を進めた結果、後から消防署から「この設備では営業できない」「多額の追加工事が必要」と指摘され、計画が頓挫する事例も少なくありません。
3. 「グレーゾーン」での運営はビジネス上の最大のリスク
「周りもやっているから」「バレなければいい」という安易な判断は、事業者にとって致命傷になりかねません。
- 行政処分と営業停止:
無許可営業と判断されれば、即座に営業停止や罰則の対象となります。 - 事故時の損害賠償:
万が一、火災や感染症事故が発生した際、適切な許認可を得ていないことは「重過失」とみなされ、保険金が支払われない、あるいは莫大な損害賠償責任を負うことになります。 - 社会的信用の失墜:
SNSでの拡散や報道により、ブランドイメージは一瞬で崩壊します。
まとめ:持続可能なサウナ経営のために
サウナビジネスは、利用者の心身を癒す素晴らしい事業です。
だからこそ、その基盤は「法令遵守(コンプライアンス)」という強固な土台の上に築かれるべきです。
「自分の計画している形態には、どの許可が必要なのか?」「消防法上の対策は十分か?」 少しでも不安を感じられたら、まずは許認可の専門家である行政書士、そして管轄の保健所・消防署への事前相談を徹底してください。
サポート行政書士法人では、複雑な公衆浴場法・旅館業法・消防法の整合性を踏まえた、適正な開業支援を行っております。
法令を守り、利用者から長く愛される施設作りを共に目指しましょう。

塚本 純平

