薬局運営法人を変更したい
薬局の運営法人を変更したい方向けに、必要な手続きと注意点について説明します。
薬局の運営法人を変更するためには、新規申請と同じ手続きが必要になるため、かなり手間がかかります。
まず、運営法人の変更までに、管轄の保健所や厚生局に何度も行かなければなりません。 特に、厚生局への保険薬局指定申請は、毎月締め切りがあります。その締め切りに間に合わなければ、運営法人の変更日に遡及ができなくなってしまうので、スケジュールが大切です。
また、生活保護法等指定医療機関申請や指定自立支援医療機関指定申請などの各種指定申請は、量が多いうえに、各指定によって申請先や申請のタイミングが異なります。そのため、手続きが煩雑で時間がとられてしまうケースが多いです。
このようなケースが該当します
・運営法人を株式会社から一般社団法人に変更したい
・運営法人を有限会社から株式会社に変更したい
・運営法人を親が株主の株式会社から子供の株式会社に変更したい
運営法人を変更して開局するための許可一覧
保健所への許可申請
まずは保健所に対して薬局のベースとなる許可を申請することから始まります。一般的な薬局が保有する許可は以下になります。
・薬局開設許可申請
・高度管理医療機器販売業・賃貸業許可申請
・薬局製剤製造販売承認
・麻薬小売業者免許申請
・毒物劇物販売業登録
・農薬販売届
厚生局への保険薬局指定申請
通常、薬局は調剤報酬での運営を行いますので、保健所の開設許可に加えて厚生局での保険薬局指定を受けなければ実質薬局を開局することができません。この保険薬局の指定を受けるには、事前に保健所の薬局開設許可を受けている必要があります。その他指定申請
薬局では様々な患者に対応するために、公費指定と言われる以下のような指定を別途取得します。・生活保護法等指定医療機関申請
・生活保護法指定介護機関指定
・介護保険法指定(居宅療養管理指導)
・労災保険薬局指定申請
・指定自立支援医療機関(更生医療・育成医療)指定申請
・指定自立支援医療機関(精神)指定申請
・結核指定医療機関指定申請
・被爆者一般疾病医療機関指定申請
・難病医療費助成指定医療機関指定申請
・指定小児慢性特定疾病医療機関指定申請
など 自治体で名称などが異なることがあります。
厚生局への施設基準の届出
保険薬局の指定を受けた後に以下のような加算を受けるための施設基準関係の届出を行います。
基準調剤加算
後発医薬品調剤体制加算
運営法人を変更して開局する際の注意点
①遡及の対象になるか
運営者を変更する場合、手続き上、開局できない期間が1ヶ月空いてしまうことになります。この1ヶ月間は、運営者にとっても機会損失であり、患者にとっても不利益が多いことから、保険調剤の「遡及」適用という制度が設けられています。
この遡及適用となりますと、開局できない期間がなくなり、新しい運営者にスムーズが引き継ぎが可能となります。
この遡及適用となるためには
保険薬局の開設者が変更となった場合で、前開設者の変更と同時に引き続いて開設され、患者が引き続き診療を受けている場合
とみなされる必要があります。
この場合以下のような点に注意する必要があります。
・薬局名、管理薬剤師、開局時間等に変更なし
・薬歴・調剤録などの患者記録を引き継ぐ
・賃貸の場合、賃貸借契約を結びなおす
・譲渡の場合、譲渡契約を結ぶ
・薬局の土地・建物の所有者が近隣の医療機関の関係者でない
・駐車場を近隣の医療機関と共有していない
・薬局の開設者が隣の医療機関の関係者でない
・医療機関から一度公道に出てから薬局に行くルートが確保されていること(薬局の出入口が公道又はこれに準ずる道路と面しているか)
②スケジュール
保険薬局の指定申請には、毎月締め切りがあり、その締め切りに間に合わなければ、指定が1か月遅れてしまいますので、スケジュールが大切です。
4/1付で運営者を変更する場合
1月 | 賃貸契約など運営法人の切替の準備 |
2月 | 保健所・厚生局への事前相談 |
3月 | 上旬:保健所への許可申請 中旬:保健所の実地調査 下旬:保健所から許可 |
4月 | 1日付で新運営法人での開局開始 上旬:厚生局への保険薬局指定申請・既存法人の開設許可廃止、保険薬局指定廃止 下旬:厚生局への施設基準の届け出 |
5月 | 保険薬局指定→遡及により4月からの調剤に保険適用 |