資金移動業

資金移動業者とは?登録するためには?銀行との違いや仕組みについて解説!

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資金移動業者とは

資金移動業者とは、為替取引を業として営む事業者のことをいい、顧客間の資金移動を可能にするサービスを提供します。

例えば、いわゆる「●●Pay」というサービスを提供している事業者は、資金移動業者として登録をしていることが多いです。


資金移動業を行うには、金融庁への登録(主たる営業所の所在地を管轄する財務局等への申請)が必要です。

この登録プロセスは複雑で、様々な書類の提出や事業内容の審査が含まれます。

登録前には、資金決済法の関連法律を理解することが必要です。

これらの法律は、主に顧客保護を目的とし、業者が遵守すべきルールや条件を定めています。


本ページでは、資金移動業の仕組みや、登録するためにはどうすればよいか、できる限りわかりやすく解説します。

資金移動業の例

キャッシュレス決済の普及に伴い、資金移動業はその重要性が高まっています。

資金移動業には様々な例がありますが、代表的なものとして以下のようなサービスが挙げられます。

例1:国際送金サービス

資金移動業者が依頼を受けて、国際送金(国内→国外、または国外→国内)を行うサービスのことです。

例えば、日本に住む外国人が実家に仕送りをする際に使われます。

例2:払い戻し可能な電子マネー

例えば●●payなどのサービスが資金移動業に該当する可能性があります。

例3:給与の電子マネー払い

企業が従業員への給与を電子マネーで支払うことです。

当該サービスを行うには第二種資金移動業登録と厚生労働省の指定が必要です。


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例4:ステーブルコイン

「安定した暗号資産(仮想通貨)」のことです。

ドルや円といった法定通貨と価格が連動するようにシステムを構築することで、価格の安定化を目指しています。

資金移動業者と銀行の違い

資金移動業者と銀行を比較すると、最も大きな違いは預金取引の可否です。

銀行は顧客から預かった資金を基に、貸出や投資で運用し、その利益で利息を支払います。

銀行業の方が広範な金融サービスを提供できるため、規制としては厳しくなります。


一方、資金移動業者は顧客間で資金を移動するだけで、銀行のような預金を目的としたサービスは行うことができません。

あくまでも、為替取引に用いられる資金のみを扱うことができます。

また、資金移動業は手数料収入が主な収益源ですが、銀行は預金と貸出しの金利差から収益を得ています。

業務範囲と規制の違いから、リスクの大きさにも違いがあります。

3つの種別 ~資金決済法の見直し~

資金移動業には、3つの種別があります。

2021年の資金決済法の改正によって、第一種、第二種、第三種の3種類に分かれることとなりました。


主な違いは、「一回あたりの送金上限額」です。

第一種は上限がありません。第二種では100万円、第三種では5万円の上限額が設けられています。

これによって、行いたい事業に合わせてサービスを展開することが可能になったと言えます。


ただし、上限金額が高いほど、規制が強くなるため、登録(第一種は認可)が難しいです。

特に、第一種の場合は具体的な送金指図がないと資金の受け入れができません(●●Payのようなチャージができない)。


また、第二種であっても、資金移動業者は100万円の送金上限額よりも低い上限を自ら設定していることが多いです。

これは、各サービス提供者がリスク管理の観点から個別に設定するもので、実態に応じた金額の設定が必要になるためです。


2024年3月6日時点では、第一種及び第二種を登録している事業者が4社、第二種のみを登録している事業者が79社となっています。第三種を登録している事業者はいません。


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資金移動業者の登録要件

資金移動業者の登録にあたっては、以下の要件等を満たす必要があります。


①株式会社または外国資金移動業者であること

②外国資金移動業者にあっては、国内に住所を有する代表者がいること

③資金移動業を適正かつ確実に遂行するために必要と認められる財産的基礎を有すること

④資金移動業を適正かつ確実に遂行する体制の整備が行われていること

⑤資金決済法を遵守するために必要な体制の整備がされていること

⑥他の資金移動業者と誤認されるような商号や名称を用いていないこと

⑦過去に資金移動業の登録等の取消しを受けていないこと

⑧過去に資金決済法・銀行法等の違反により罰金刑に処せられ、執行後5年を経過していること

⑨他に行う事業が公益に反していないこと

⑩取締役・監査役等が成年被後見人等に該当しないこと


3番の財産的基礎については、一律に資本金の額や純資産額を求めるといった定量的な基準は設けられていません。

登録申請者が行おうとする資金移動業の内容及び方法に応じて、必要となる財産的基礎を有するかを具体的に審査されることになります。


4番や5番の社内体制整備については、登録申請において厳しい審査がされることになります。


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必要な社内体制

登録要件における社内体制整備については、申請の際に厳しい審査がされることになります。

資金移動業者としてサービスを行いたい場合は、問題の発生なく遂行できる体制にあることを示さなければなりません。


まず、資金移動業務においては適切なコンプライアンス体制の確立が基本です。

これは、資金決済法のみでなく、犯罪収益移転防止法や個人情報保護法を含む法律や規制の遵守を意味します。

また、顧客の信頼を確保するためには、透明性の高いサービス提供と個人情報の保護に関する厳格な措置が必要です。


人的体制としても、営業部門やコンプライアンス部門といった責任部門の設置、また部門責任者の設置が必要となっています。

特に資金移動業を管理する責任者として、為替取引の知識・経験を持った人材を配置する必要が出てくるため、人材の獲得が必要になる場合もあります。


以下では、特に重要となる規制概要について簡単にご説明します。(他にも、滞留規制措置、苦情等処理、システムリスク管理など規制は多岐にわたっています。)

履行保証金

資金移動業者は、利用者から受け取った資金(未達債務と言います。送金が完了しておらず、滞留している資金のことです。)の100%以上の額を履行保証金として保全しなければなりません。


その金額を「要履行保証額」といい、「資金移動業の種別ごとの各営業日における未達債務の額」+「還付手続に関する費用の額」で計算されます。

資金移動業者は、各営業日ごとに資金移動業の種別ごとの「要履行保証額」を把握しなければなりません。


履行保証金の保全方法は、①供託、②保全契約、③信託契約の3つがあります。

これらの方法は併用が可能です。

また、第三種においては、これらに加えて利用者資金を自己財産と区別した預貯金等で管理することも可能です。

取引時確認措置

資金移動業者は、犯罪収益移転防止法に基づいて、以下を行う場合には、「取引時確認」と呼ばれる本人特定事項等の確認が必要となります。


①10万円を超える現金の受払いを伴う為替取引

②為替取引を継続的に又は反復して行うことを内容とする契約の締結(=会員登録)


取引時確認では、顧客の本人特定事項(氏名、住所、生年月日など)や取引目的、職業などを確認します。

これは、マネーロンダリングやテロ資金供与など、不正な取引を防止するためです。

利用者保護措置

資金移動業者は利用者の保護等を図るため、次のような措置を講じるように定められています。


(1) 顧客が銀行等が行う為替取引と誤認することを防止する措置を講ずること。

(2) 手数料その他の契約内容等利用者に対する情報を提供すること。

(3) 送金額等の資金を受領した時は受取証書を交付すること。

(4) 社内規則等を定め、従業者に研修等を行うこと。 等

金融ADR対応

資金移動業者は、裁判外紛争解決制度(金融ADR制度)の対象になっているため、法に基づいて資金移動業に関連する以下2つの措置を講じなければなりません。


(1)苦情処理措置

(2)紛争解決措置


一般的には、認定資金決済事業者協会である「一般社団法人日本資金決済業協会」に加入し、規程に従うことで、苦情処理措置、紛争解決措置の対応をしているケースが多いです。


「一般社団法人日本資金決済業協会」に加入した場合、以下のような対応を受けることが可能です。


(1)協会が行う苦情解決により、資金移動業関連苦情の処理を図ることができます。

(2)協会と東京の三つの弁護士会との間で締結した資金移動業関連紛争の解決を図る旨の協定を利用することにより、資金移動業関連紛争の解決を図ることができます。

登録申請の手続き先

資金移動業者登録申請の手続き先は、主たる営業所の所在地を管轄する財務局等になります。

内閣総理大臣から金融庁長官を介し権限が委任されています。


例として東京都に本店を置く法人の場合は、東京財務事務所が手続き先となり、様々な書面のやり取り・審査が行われることになります。


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よくある質問

資金移動業を行うには、資金移動業者としての登録手続きが必要です。

申請する場合には、犯罪収益移転防止法に従った適正な顧客管理と、資金移動業事務ガイドラインに基づく内部管理体制の確立等が求められます。

銀行は預金の受け入れや融資を行うことができますが、資金移動業者は顧客からの預金受け入れや融資業務を行うことができません。

資金移動業者の主な業務は、顧客間の資金移動です。

登録手続きをするためには、管轄の財務局等に手続きを開始したい旨を伝える必要があります。

手続きに必要な書面は多岐にわたり、それぞれの書面のドラフトチェックを当局と行う必要があります。

早くても1年くらいはかかる手続きです。長いと2年以上かかるケースもあります。

当局とのドラフトチェックの段階では予定で話を進めることができる場合がありますが、予定のままだと当局からこれ以上は審査を進めるのが難しいと言われる可能性も出てきます。

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